ターゲット層への効果的なリーチとフリークエンシーの最適化がROIを底上げ [アドテック東京2013レポート](Day2前編)
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on 2013年10月15日 in(ライター:柏木恵子)
9 月18日から2日間にかけて開催されたad:tech Tokyo。そのキーノートの中から、Facebookの「Move Fast and Measure Things」(前編)と、Adobeの「Harnessing Data and Technology for Success in a Changing Landscape」(後編)の2つのセッション概要を紹介する。
効果測定が握るネット広告拡大の鍵
19 日のキーノートは、フェイスブック・ジャパンの代表取締役岩下充志氏による、「Move Fast and Measure Things」と題した講演から始まった。実名登録制のFacebookの強みは、ユーザのプロフィールや趣味嗜好が分かることだ。ユーザーにまつわる生 のデータがたくさん蓄積されていることが、効果測定における武器になる。
メディアと広告の関係では、まずメディアが登場 し、それを消費者が利用する。そのうちに先進的な企業が広告を試し、効果測定ができるようになる。検証されると、保守的な広告主も使い始めるという流れ だ。こうしたサイクルのスピードは加速しており、ユーザーが5000万人に達するのにかかった時間で見ると、ラジオは38年、テレビは13年、インター ネットは5年、Facebookはわずか2年に短縮されている。
日本のFacebookには2100万人の月間アクティブ ユーザーがおり、昨年と比べて40%増加している。ユーザーの利用頻度が高く、モバイル利用が多いことが特徴だという。世界的には急拡大するネット広告だ が、日本の広告全体に占めるネット広告の割合は15%にとどまる。その理由として、岩下氏は3つ挙げた。
ひとつは習慣だ。 新しいことをスタートするのは難しい。特に日本企業は予算配分を前年比で行うため、それが大きな変化を起こす阻害要因となっている。2つめは、サイロ化さ れた組織構造だ。メディア別に個別のKPIを追い、メディアをまたいだ予算配分が機能していない。また、全社レベルでのマーケティング予算配分において ネットは蚊帳の外、といった問題もある。3つめは効果測定で、これがまだ確立されていないのが最大の問題だという。
広告効 果測定は、2つのステップで考えるべきだ。ひとつは、デジタルメディア間での横比較で、これは比較的取り組みやすい。その次のステップとして、従来のマス メディアをもまたがる比較が可能なKPIを定めなければいけない。ネット広告には、テレビで言うところの視聴率のような統一された指標はまだ確立されてい ない。従来のマスメディアを横断する形の指標を作っていくことが課題としてある。効果測定の問題を解決できれば、ネット広告の利用はどんどん拡大するだろ う。
リーチの最適化でネット広告の効果を底上げ
さらにもう一歩突っ込んで効果測定について理解するために、Facebookの効果測定チームのワールドワイドリーダーを勤めるブラッド・スモールウッド氏が加わり、質疑応答形式でセッションが進められた。
Q.今の広告業界で最もエキサイティングなことは?
A. ネット広告業界には大きなポテンシャルがある。その鍵を握るのが効果測定だ。Facebookの広告効果測定に関しては3つある。まず「Reach」。 リーチしたい人に確実にリーチできたか、より多くの人にリーチできたかという指標である。2つめは「Brand Resonance」で、ブランドのイメージを改善できたか、コンシューマの認識を変えることができたかという指標だ。3つめは、「Reaction」。 消費行動を引き起こしたか、製品を購入したりサービスに加入したか、という指標である。
オンラインには人にメッセージを直 接届けるという新しい能力がある。例えば、ウェブサイトにアクセスしたユーザーに対して、カスタマイズされたメッセージを見せることで、リターゲティング によるEコマースが実現できる。人にリーチするという原則はブランドマーケティングも同じだが、より大規模なリーチを目的とする。そして、相手の商品認知 度によって、見せる頻度を変えることが重要となる。
Q.ネット広告の可能性を最大限に引き出すためには?
A. 効果の測定方法が確立していないことが課題である。メッセージが人々に届いたか、人々の行動をどう変えたかが指標となるが、オンラインでよく使われる CTR(クリックスルーレート)はそれを示す最適な指標ではない。購入した人のうち、広告をクリックした人は1%という調査もあり、この1%の最適化は本 当の意味での最適化ではないからだ。
Q.CTRがROIに直結しないのなら、成功を測る指標は?
A.ターゲット層に効果的にリーチすること。リーチの最適化によってROI は70%向上し、フリークエンシー最適化で40%向上すると言われる。リーチの頻度が成功の鍵である点は、テレビでもネット広告でも同様である。頻度のスイートスポットを見つけることが重要だ。
A. ハイパーターゲティングという言葉が流行っていて、成熟しようとしている。ビッグデータというコンセプトを使うことで可能になるものだ。広告主自身の CRMのデータベースやEメールなどをFacebookの情報と紐づけることで、カスタマーセグメントが実現する。これを、カスタムオーディエンスと呼 ぶ。マーケターはコンシューマを簡単かつ効率よく特定できる。日本でも、このアプローチで成功を収めている企業が出て来ている。
Q.日本市場への期待は?
A.モバイルには大きなチャンスがある。実際、売上げの41%がモバイルから発生している。日本のモバイル市場は先進的で、今後のモバイルの進化を占う上で役に立つと考える。
ABOUT 大山 忍
ExchangeWire Japan 編集長
米国大学卒業。外資系企業を経て2000年にネット広告効果測定ツールを提供するベンチャーに創業メンバーとして参画。その後、バリューコマース株式会社と合併。
2007年1月にオムニチュア株式会社(現Adobe)に参加、コンサルティングサービスを立ち上げる。ビジネスコンサルタントとして米国のベスト プラクティスを日本の課題やニーズに合わせて提供、ウェブ解析やガバナンス(データ主導の組織・仕組化)に関する執筆・講演を行う。