オーディエンスプランニングで広告効果を高め、アトリビューション分析でネット広告の貢献度を可視化|Interview:メディアプランニングの舞台裏
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on 2013年9月27日 inネット広告の世界では、次々と新しいアドテクノロジーが生まれ、広告効果を最大化するためには、メディアの選択だけでなく、オーディエンスデータの最適化も重要な成功要因となってきた。メディアレップ事業を中心に、ネット広告の可能性を広げるため、最新テクノロジーを開発・提供しているDACの冨田真吾氏に、広告効果を高めるための新たなアドテクノロジーの選択方法について、キャンペーン事例も交えながら話を伺った。
(聞き手:ExchangeWire Japan編集長 大山忍)
DMPの登場により、メディアプランニングから“オーディエンスプランニング”へ
大山:デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社(DAC)の概要と、冨田さんが所属されているパフォーマンスマーケティング部の業務内容を教えてください。
冨田:DACは、メディアレップという立場で、メディアの広告枠の取りまとめを本業としている会社です。媒体社に代わってインターネット広告枠を広告会社に販売しています。
パフォーマンスマーケティング部は、今年の4月に新設された部署で、広告効果を最大化するため、第三者配信(3PAS)を利用したアトリビューション分析サービス、広告のコンバージョンを高めるためのクリエイティブのディレクション、今年からはDMP(DataManagementPlatform)活用の推進を行っています。
大山:デジタル広告におけるメディアプランニングの基本的な流れと、プランニングをする際のポイントを教えてください。
冨田:メディアプランニングは、広告主がマーケティング活動に対して抱える課題を汲み取り、リスティング広告、ディスプレイ広告、メール広告など複数のメニューを組み合わせ、それぞれの広告主に最も適したプランをカスタマイズし提案していきます。与えられた予算の中で、最も高い広告効果を出せるプランニングを作成するためには、非常に広い知識が要求されます。
また、出稿はPDCAサイクルを回しながら繰り返し行うため、プランナーは、一連の出稿の効果について逐一検証を行い、ブラッシュアップをしていく必要があります。DMPを導入する企業も増えてきているので、今後はメディアプランニングよりも、ユーザごとに広告配信を最適化する“オーディエンスプランニング”へとシフトしていくのではないかと思います。
大山:DSPが登場したときには「枠から人へ」という広告配信に大きな変化がありました。DMPの登場により一人ひとりのユーザの好みに合った広告をターゲット配信することが可能になってきたということでしょうか?
冨田:そうですね。もちろん、掲載面をどこにするかというのも変わらず重要なポイントだと思います。例えば、ポータルサイトであれば、多くの人が来るわけですから、そこに広いリーチを取るという広告を配信することも大切なことだと思います。
大山:“オーディエンスプランニング”を行う際に重要なポイントはなんでしょうか?また、どのように使っていけばいいのでしょうか?
冨田: “オーディエンスプランニング”を行うにはまずユーザを知ることが重要です。そのためにDMPを使ってデータを収集します。広告主のオウンドメディアにど のような属性を持ったユーザが集まるのか、またそのユーザがどういう行動をしているのかということは、カスタマイズされた分析が必要になります。もちろん アクセス解析ツールなどで情報収集は出来ますが、DMPを使う理由はそれをユーザーを分析し、そのデータを基に見込顧客となり得るユーザー像をみつけだ し、広告の配信などを利用する事で、顧客の獲得につなげるためです。
大山:まずは、出稿する前にオーディエンスを理解するためにデータを収集するということですね。それは、オウンドメディアに来ているユーザの傾向値を見ながらプランニングするということですか?
冨田:オウンドメディアへの訪問者数が多ければいいですが、ユーザが少ないサイトの場合、十分なデータを収集できません。その場合は、広告を出稿し、反応したユーザと反応しないユーザを分析するという方法もあります。
大山:サイトの特徴によって“オーディエンスプランニング”の方法が違ってくるということでしょうか?
冨田:そういうケースもあります。ただ、“オーディエンスプランニング”は、まだまだ始まったばかりの概念なので、これからさらに手法が磨かれていくのではないかと思います。そもそもインターネット広告は、『メディア』、『ターゲット』、『クリエイティブ』が効果を高めるポイントなのですが、その『ターゲット』の選定に、“オーディンスプランニング”という一つ有効な手法が増えたということだと思います。
“ベイジアンネットワーク”を使った新たなアトリビューション分析サービスを実施
大山:御社で提供しているアトリビューション分析サービスについて教えていただけますか。
冨田:ある不動産関連企業では、約800万円のメディア予算でリスティング広告、DSP、純広告などを手広く継続して出稿されていました。予算配分については、基本的にサーチで刈り取り、あとはディスプレイに寄せてチューニングをするという従来型の運用をしていました。しかし、コンバージョンの内容、貢献度、最適な予算配分などをもう一度可視化したいということで、安価で多様な機能を持つ弊社の「i-Effect」というツールを使い、アトリビューション分析を行うことになりました。
大山:i-Effectの「売り」は安価でできるという以外になにかありますか?
冨田:i-Effectは3PASのソリューションなのですが、クリエイティブ的なオプション機能があります。それはパーツ入稿ができるということです。クリエイティブのパーツを背景、ボタン、メインビジュアルなどのレイヤーに分けて、パーツの組み合わせを考えて入稿できるということが1つの売りです。配信ロジックは、ロシアの予測モデリングエンジン「u-Predict」を搭載しています。このエンジンは1インプレッションごとの最適化が可能で、どのクリエイティブを出すと一番効果が高いのかを判別します。それはCTRベースも、CVRベースも同様です。
大山:アトリビューション分析を取り入れたキャンペーンはどのような効果があったのでしょうか?
冨田:今回のアトリビューション分析の事例は、“ベイジアンネットワーク”という統計学の手法に基づいて実施しました。従来のアトリビューション分析は、均等配分や、初回・ラストクリックなどで貢献度を決めてきたのですが、これだけで評価していいのかという課題がありました。一方“ベイジアンネットワーク”を使うと、「重みづけ」ができるようになります。つまり時間的効果を加味し、CV貢献度を算出することができだけでなく、CV貢献度を用いた最適化予算配分が可能です。実際に事例では、“ベイジアンネットワーク”で最適化された予算の累積CV数が、予算変更前の累積CV数に比べて約10%アップしました。
一般的なアトリビューション分析手法
均等配分モデルと『ベイジアンネットワーク』モデルの違い
『ベイジアンネットワーク』を活用した分析ロジック
今回は単純にメディアだけの切り口で重みづけをしたのですが、メディアとクリエイティブ、またはDMPと絡めることで、オーディエンスに基づいたターゲティングの重みづけができ、今後はより精度の高いプランニングができるのではないかと思っています。
予算配分最適化の事例
予算配分の最適化によるCV数効果の事例
大山:アトリビューション分析は、どのような頻度とタイミングでやるべきなのでしょうか?
冨田:数を重ねると、精度もより高くなると思いますので、継続的に行ったほうがいいと思います。
大山:最後に広告主のご担当者様へメディアプランニングに関するワンポイントアドバイスをいただけますか。
冨田:新しいソリューションがたくさん出てきていますが、どんなサービスでもある程度の運用期間を経て初めて結果を出すことができます。ですから、事前に入念なリサーチをしたうえで導入したのであれば、そのソリューションを用いて、辛抱強くPDCAサイクルを回していくことが大切です。弊社は広告主の広告効果を最大化できるよう、広告主、代理店のソリューションパートナーとして、とことんお付き合いさせて頂きます。
ABOUT 大山 忍
ExchangeWire Japan 編集長
米国大学卒業。外資系企業を経て2000年にネット広告効果測定ツールを提供するベンチャーに創業メンバーとして参画。その後、バリューコマース株式会社と合併。
2007年1月にオムニチュア株式会社(現Adobe)に参加、コンサルティングサービスを立ち上げる。ビジネスコンサルタントとして米国のベスト プラクティスを日本の課題やニーズに合わせて提供、ウェブ解析やガバナンス(データ主導の組織・仕組化)に関する執筆・講演を行う。