WireColumn: アトリビューション特別対談:Facebook・ソーシャル・アトリビューション、日米の現状と課題 (Part 1)
(コラムニスト:ATARA 有園雄一、Attribution.jp)
特別対談です!今回は、Kenshoo SocialのGeneral Manager、Sivan MetzgerさんとAPAC地域Sales VPである治田耕太郎さんに、Kenshooが提供するプラットフォームやソーシャルを含めたアトリビューションマネジメントへの取り組みについてなどについてATARAの代表取締役CEOの杉原が対談をしました。
第1部:ソーシャルパート
Kenshoo Social, General Manager, Sivan Metzger氏(以下Sivan, 写真中央)
Kenshoo, APAC Sales, VP 治田耕太郎氏(以下Ko, 写真左)
アタラ合同会社 代表取締役CEO 杉原剛(以下Go, 写真右)
Ko: まずは米国でのFacebook広告の状況を説明してもらえますか?
Sivan: Facebook広告自体はとてもユニークな広告だといえます。個人的にはFacebookも含めたソーシャルの各企業は成長していま すが、広告という観点からは企業のマーケティング担当者が学ぶべきこと、研究するべきことは非常に多いフェーズだといえると考えています。
例えば、検索連動型広告はとても成熟しているといえるでしょう、代理店やマーケターは検索連動型広告がどういう広告モデルで、どういう風に使えば良いのかを十分に理解していると思います。
しかしながら、Facebook広告は全くといっていいほど違います。誰がInfluencerでどのように自社の評価が広まっているのか、どのような広告を発することでその効果を大きくしていくか、というのはまだまだ明確ではありません。Facebook広告を検索連動型広告と同じようには扱えないといえるでしょう。
Ko: Facebook広告を使って成功させるカギはなんでしょう?
Sivan: まず、Facebook広告を含むソーシャルメディア上でのマーケティングを成功させるには緻密な戦略が必要です。
どのようなコンテンツを準備するか。そのコンテンツでどうやってユーザーを獲得、およびエンゲージするか。その結果できたコミュニティをどのように 拡大していくのか。そして、どのようにそういったユーザーをターゲティングして、よりエンゲージメントの度合いを高めていくのか。そういったプランが必要 です。
そうしたコンバージョンファネルの上部に影響を与える広告手法の戦略を作ることは非常に難しいですし、大変な作業になります。実際のところ、その戦略やプランの正当性を評価するのに長い時間がかかることもあります。
ですので、まず必要なこととしてはマーケティング担当者がその価値を理解するところが大事だと思います。「いいね!」の数やビデオコンテンツのダウ ンロード回数がその後どのようにマーケティングや売上に貢献しているのかが可視化出来る、ということを理解することが重要です。
Ko: なるほど、よくいわれることではありますが、日本のネット広告業界はアメリカの状況から2〜3年遅れているといわれています。今まで話されてきたような考え方はアメリカの代理店やマーケティング担当者の間では広く認識されているのでしょうか?
Sivan: まず、ソーシャルでもそれ以外でもいわれることですが、マーケティングの流れとして一対多(広告主から多数の消費者)に向けてのマーケ ティングからOne to Oneへの流れがあります。ですので、一人一人の消費者に対してどのように適切かつ正確な内容でマーケティングが実施できるのか、という点が、広告主に も、代理店にも、ブランド企業にも必要な視点だといえるでしょう。
Ko: そのような視点に立脚すると、もはや消費者にとっては広告と有益な情報との差というのは無くなってくるでしょうね
Sivan: その通りです。
Ko: ここで杉原さんにもお伺いします。日本において「ソーシャルマーケティング」ないしは「ソーシャルマーケター」という言葉がありますが、最適化やプランの立案において、今までの話のような一種の科学的、統計的なアプローチがなされているようには見えないのですが、いかがでしょう?
Go: 確かにそれはあるでしょうね。ソーシャルの活用はFacebook pageやTwitterアカウントを作って運用することに集中していて、ソーシャル広告分野へは今ちょうど広がりを見せ始めようとしている現状です。ただ、現状の日本では、オウンドメディアもペイドメディアも管理が分離してるし、Paidの中でもそれぞれの広告手法において運用がサイロ化している現状があると思います。
そういう意味で包括的な運用にはまだなっていないといえるでしょうね。米国ではどうでしょうか?
Sivan: 個人的な見解では、そこがFacebookの課題といえるでしょう。オウンドメディアとペイドメディアの担当者、広告手法においては分離しているのが現状だと思います。
実際の事例ですが、FacebookのPageを管理する企業と弊社で連携して、PageやTwitterで投稿された内容についてKenshooで測定をしました。そうなると、どのコンテンツがより消費者に対して効果的だったのかもわかりますし、結果としてその投稿がいくらの売上を生み出したのか もわかります。Revenue Per Postという指標で見ることも出来ますし、そういう概念が普及することでよりソーシャルのマーケティングとしての価値がわかってくるはずです。
そういった形で、マーケティング活動の可視化、厳密な価値の測定が可能になるということがKenshooの一つの価値でもありますし、ソーシャルにおいては重要な側面だと思います。
Ko: 実際に私が以前こちらのインタビューでも話した内容ですが、ソーシャルのコンテンツは一回のコンバージョンで判断するのではなく、そのコンテンツがいかに消費者をMarketedしたのかという点が重要だとも思います。
CPAやLast Clickなどにこだわって短期間の投資効果を最適化することも重要だとは思います。しかし、Facebook広告を使いこなす、という意味ではその発想では難しいような気がします。
かといって数字的な裏付けがないままでソーシャルをマーケティングに組み込むのも難しいと思います。
ポイントになるのは、ともすると感性的になりがちなコンテンツ作成と数学的な矮小化に陥りがちな測定や最適化をいかに融合していくのか、という点だと思います。
なかなかこの部分は実現が難しいところだとは思うのですが、Kenshooを使ってもらうことで、少なくとも両者の相乗効果が可視化出来るというところから次のステップに進んでいきたいと思います。
Go: 2007年頃に米国を中心にアトリビューションという概念が広がり始め、その頃にちょうどソーシャルの広告も話題に上がるようになりました。 当時はFacebookのコンバージョンタグのベータ版も公開されたりしていましたが、あくまでFacebook広告の成果のみを測定する物でした。最近は Facebook側のスタンスも変わってきてFacebookと他の施策のデータを一元的に管理して見える化できるようになってきましたね。
Sivan: アタラさんのようにマルチチャンネルでのアトリビューションを実施している会社さんには、そこは重要な点ですね。Facebook広告もメディアミックスの中での一つのコンポーネントに過ぎません。
実際の事例ですが、アパレルの通販サイトで非常に興味深い事例があります。その広告主さんの場合、販売している商品のメーカー、例えばNikeや Adidasに既に十分大きなブランド力があります。ですので、彼らはソーシャルにおいて、自分のサイトで商品を購入することの優位点、素晴らしさを消費 者にアピールしたわけです。
つまり、広告の目的がブランディング、自社のサイトで購入することが良いことだ、という認知獲得でもありますし、その結果としてのコンバージョンでもあるわけです。
(Part 2へ続く)
ABOUT 有園 雄一
アタラ合同会社 取締役COO
オーバーチュア(2004~2007年)とグーグル(2007~2009年)で勤務。オーバーチュアで は、テレビCM投下量と検索数の相関分析調査を総合代理店の協力の下に実施。「○○で検索!」などのGo-to-Web型の広告手法を確立。グーグルで は、主にAdWordsの営業戦略の立案と実施を担う。現在、アトリビューションマネージメントコンサルティングを広告主や広告代理店に対して行ってい る。