Editor’s Eye: レスポンシス日本法人設立から垣間見る、戦略的クロスチャネル設計のニーズと重要性
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on 2013年3月07日 in米国のEメールマーケティングベンダーとして、米国Forrester Research社の調査で高い評価を受けているResponsysが、2月下旬に日本法人設立の発表をした。Responsysのシステムは、数年前に米国の某カンファレンスで、レンタカーの企業がオンライン(Webの予約サイト)とオフライン(レンタカーのピックアップカウンター)の情報によるセグメント分析に基づき、Web・Eメールでの顧客接点を全てシナリオ化・自動化し、ターゲティング配信による最適化で何倍もの成果を出したという、日本市場と比較して何年も先をいく強烈なケーススタディとして筆者の記憶に残っていた。特に、管理画面上でのシナリオ設計の機能は、昨年のOracleによるEloquaの買収にみられるように、米国で需要が高まっているマーケティング・オートメーションの先駆けだったように思う。
今回、Responsys社のプレスリリースに目をとめたのは、単に高度なEメールマーケティングツールが日本に本格導入されるという点ではなく、DSPとも連携し、ディスプレイ広告やソーシャルといったメディアも含めマーケティングシナリオを設計・自動化できるという機能の点だ。(注:DSPに関しては、現在日本向けを準備中。年内サービス開始予定とのこと)
2012年は、日本のアドテクノロジー業界にとっては、高度なツールがある程度出そろった年であった。そして同時に、それらのツールを使いこなせる人材不足が指摘され、トレーディングデスクといった広告オペレーションをアウトソースできるサービスが少しずつ展開されはじめた。
Responsysのシナリオ設計の機能と概念が日本市場に導入されるという事は、日本のデジタルマーケティング業界の人材不足に拍車がかかる事が容易に予測できる。というのも、このシナリオ設計には、アドテクノロジー・Eメール・ソーシャルの技術的な特徴を理解しながら、カスタマージャーニーやインタラクションポイントなどのマーケティングシナリオを戦略的に考え、効果測定に必要なデータの設計から分析・最適化を行う必要があるからだ。すなわち、1)デジタルマーケティング・テクノロジーの基本概念の理解、2)マーケティングの知識と経験、3)データ分析の概念の理解、とハードルが3つもあがることになる。
このようなテクノロジーの進化に企業はどのように対応していくべきなのか?まず前提条件としては、企業の担当者は社外の優秀なブレインと上手く連携していく必要がある。そして、アウトソースを発注する側として、必要な人材・リソースの課題認識と、それらのリソースを自社のプロジェクトにどのように巻き込んで行くかの目的意識を持つ事が非常に重要になる。
そして、アウトソースするリソースとしては、大きく分けて3つのタイプに分類できる。
1)ツール専門/ベンダーコンサルタント(導入・活用)
2)オペレーション (例:トレーディングデスク)
3)戦略・上流コンサルタント
1と2に関しては、既に日本市場でも提供されている人材サービスだが、3に関しては今後どの企業がその役割を担って行くか気になるところだ。米国ではDeloitteやAccentureといった戦略コンサルティングファームがデジタルの分野でもコンサルティングのサービスを積極的に展開しているが、日本ではあまり聞かない。期待できるのは、既存のインターネット広告代理店、独立系のデジタル系コンサルティング会社、あるいは海外のインタラクティブ・コンサルティング会社の日本進出といったところだろうか。
テクノロジーは充分に出そろった。2013年は、アドテクノロジー企業の付加価値のあるサービス展開に期待したい。
図1:Responsys Interact Suiteの『Interact Program』。マーケティングシナリオを設計できる。
図2:Responsys Interact Suiteの『Interact Team』。複数部門間にわたるワークフロー作成、承認プロセスを管理できる。
(ExchangeWire Japan 編集長 大山忍)
ABOUT 大山 忍
ExchangeWire Japan 編集長
米国大学卒業。外資系企業を経て2000年にネット広告効果測定ツールを提供するベンチャーに創業メンバーとして参画。その後、バリューコマース株式会社と合併。
2007年1月にオムニチュア株式会社(現Adobe)に参加、コンサルティングサービスを立ち上げる。ビジネスコンサルタントとして米国のベスト プラクティスを日本の課題やニーズに合わせて提供、ウェブ解析やガバナンス(データ主導の組織・仕組化)に関する執筆・講演を行う。