Interview: 改善アクションにつながるインサイトをリアルタイムで提供。米国発の広告管理インテリジェンスツール、Maxifier日本上陸
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on 2012年8月20日 in広告テクノロジーとその周辺ビジネスにおいて、日本の数年先を行く米国市場。2012年4月、媒体社とアドネットワークのビジネス最適化で実績をあげている米国Maxifier社が日本オフィスを設立、日本市場での経験豊富なマネジメントチームを迎え本格的に日本でのサービス提供を開始した。Maxifier最高レベニュー責任者(CRO)のデニス・カレラ氏とアジアパシフィックManaging Directorのシャオミン・シャオ氏に、日本で展開するサービスの概要と先日発表した米国DSPのMediaMath社との提携を含めた今後の戦略についてお話を伺った。
■ 日本で提供するMaxifierのソリューションの概要を教えてください。
Maxifierが提供するのは『キャンペーン・マネジメント・プラットフォーム』です。主に媒体社・アドネットワーク向けにキャンペーンの“改善アクションにつながるインサイト(Actionable Insight)”が得られるソリューションを提供しています。
“改善アクションにつながるインサイト”とは、大別するとパフォーマンスの改善に必要な『レコメンデーション』と、レコメンデーションを採択した際の効果や影響の『予測シミュレーション』の2つで構成されています。
具体的な例をアドネットワークのケースで見てみましょう。例えば、CPCで課金する媒体の場合、CTRが利益をあげるための重要な指標です。CTRが低いと無駄なインプレッションが発生し、運用担当者はその改善を行う必要があります。従来の最適化プロセスでは、担当者は毎日レポートをダウンロードしてエクセルなどで分析、分析結果からパフォーマンスの悪いサイトを絞り込んで、該当サイトをキャンペーンから外し、再度効果を測定する・・というプロセスになると思います。
Mixifierのツール『ADMAX』では、これら分析からインサイトを得るまでのプロセスを自動化します。具体的な例をあげると、毎朝パフォーマンスの悪いキャンペーンのアラートが自動的に配信され、CTRが悪ければCTRの改善オプションが管理画面にリストUPされます。これが『レコメンデーション』の機能です。今度は、改善オプションリストの中からレコメンデーションを一つ選択すると、そのレコメンデーションを採択したときの予測効果を数値で表示します。これが『予測シミュレーション』の機能です。
この事前シミュレーションはとても重要です。なぜならば、1つのキャンペーンに変更を与えると、同時進行のほかのキャンペーンにも影響を与える可能性が高く、この影響は良い場合と悪い場合があります。ひとつの変更が全体に与える良い影響と悪い影響をそれぞれ数字で可視化する『インパクト分析』がビジネスの利益を最大化するためにはとても重要なのです。
■ Maxifierが提供するツール『ADMAX』は、導入にタグが不要なのが技術的な特徴ですが、タグが不要なツールの強みを教えてください。
カオスマップを見てわかるように、広告テクノロジー市場ではSSP、DSP、アドネットワーク、データプラットフォーム、分析ソリューションなど、たくさんのベンダーがソリューションを提供しています。米国では媒体社が埋め込んでいるタグ数の平均が15〜20、ひどいときには40〜50もあると言われており、これらのタグはウェブサイトに対して負担をかけ、サイト遅延の原因となります。既にたくさんのタグを埋め込んでいる媒体社に追加でタグを埋め込んでいただくのにはビジネスとしてハードルが高いですし、1つのタグは結局1つの問題解決にしかつながりません。
タグによって取得されるデータの流れを見てみると、各ソリューションの情報は最終的にアドサーバーにインテグレーションされます。すなわち、どの第三者ベンダーを使っても、全ての情報がアドサーバーに落ちる事になるので、アドサーバー上の全ての情報を『ADMAX』が分析することで、包括的な分析をすることができ、最適化に必要な次のアクションをレコメンドすることができるのです。
アドサーバーがデータを取得さえしていれば、cookie情報が取得できずに分析が困難とされているモバイルのキャンペーン分析およびその最適化も可能です。現在、ヨーロッパでモバイルのパイロットケースを実施中です。
■ 日本市場と、米国・欧州の市場に違いは見られますか?
日本・米国・欧州は非常に異なる市場であると見ています。特に代理店との関係性の違いが顕著であると感じています。
例えば、米国では媒体社は代理店をベンダーとして使っていて、広告を売ってくる相手としてみているので、パートナーシップとしての考えをそれほど強く持っていません。代理店も基本はマージンビジネスですので、いかに媒体社のコストを押さえて、自社が広告主から得るフィーを最大化するかが最大の関心ごとであり、両者の関係は比較的ドライです。よって代理店・媒体社はそれぞれが主導となり必要なツールを見つけてきて、自分たちの利益を最大化するために何をすべきかを常に探求しています。
一方日本では、代理店と媒体社との結びつきが非常に強く、共同的に媒体価値を高めていると見ています。したがって、日本の媒体社は欧米に比べてより多くのデータを代理店に提供し、ともに活動する傾向がみられます。
■ 日本市場における、Maxifierの販売戦略と導入実績は?
米国では、ほとんどが媒体またはネットワークへの直販売が行われています。昨年までは、売り上げの約8割は媒体社からでしたが、今年はネットワークへの導入が増えています。
日本での販売戦略を考えた場合、最終的にMaxifierのツールを正しく扱えるかどうかがキーです。すなわち、Maxifierは単なるツールを販売するベンダーではなく、テクノロジーを使いこなしてもらうことで、媒体社・アドネットワークのビジネスに貢献することが目的としています。
大手の媒体社でツールを扱う専任のチームが存在し、トレーニングも受けられる状態であればMaxifierが直接対応させていただくことも可能です。中小のプレミアム媒体の場合は、代理店の広告ネットワークに属している事が多いので、各媒体社との強い関係にある代理店に対してソリューションを提供していきます。
日本での導入は、社名を公表する事はできませんが、既にサービスの提供が進められています。
■ Maxifierのツールを使いこなすため、どのようなサポートを提供されていますか?
クライアントのライフサイクルは、①システムの導入、②キャンペーンの実行、③ビジネスの最適化の3ステップで考える事ができますが、各ステップにおいて弊社ではビジネスおよび技術の有償コンサルティングを提供しています。
例えば、システム導入のステップにおいては、事前検証・要件定義・導入の流れでコンサルタントがサポートします。事前検証としては、クライアントから3〜4週間分の過去データを預かり、Maxifierのサーバーに蓄積し、QAを行います。アドサーバー上の蓄積データを技術検証することにより、クライアントのビジネス運営状況を把握し、またキャンペーンで求めている指標や媒体社と広告主との制限事項などビジネス要件を確認することで、ADMAXで対応できる事・できない事を明確化していきます。このように、技術的・ビジネス的要件をもとに、クライアントに必要なソリューションやサービス、最適化方法をご提案した上で、導入のサポートへと進めて行きます。
導入のタイムラインとしては、早い場合で2〜3週間、平均的には1〜2ヶ月ほどかかります。
■ 米国MediaMath社との提携の背景と、提携によって日本市場にもたらすメリットを教えてください。
Maxifierの日本のマネジメントチームは過去10年以上にわたり、ディスプレイ広告やリスティング広告、エクスチェンジ、オーディエンスターゲティングなど、アドテクノロジーの様々な分野で当時ベストと言われる米国のテクノロジーを日本に提供する経験を積んできました。昨年の前半から、日本でローカルのDSPが立ち上がり市場の広がりが見られたので、米国のトップDSPベンダーと日本で連携することにより、より日本市場の発展の可能性を感じました。
MediaMath社は米国で急成長しているDSPで、フォレスターリサーチのレポートでもトップベンダーとしての評価を受けています。DSPテクノロジーの先駆者であるだけではなく、多くの第三者ベンダーとのインテグレーションの経験が豊富で、バイサイド(Buy Side)と呼ばれる代理店・広告主への豊富なノウハウを持っています。
技術的な強みとしては、MediaMath社は処理速度(latency)を重要視しており、米国のDSP企業の中でアジアにデータセンターを持っているのは、現時点ではおそらくMediaMath社だけだと思います。
RTB(リアルタイム入札)の取引において処理速度は非常に重要です。高いレスポンスを実現する事により、入札精度をあげる第三者ベンダーとのインテグレーションも柔軟にできるようになり、その結果、より効果の高いキャンペーンの実施が期待できます。
今回のMaxifierとMediaMathの提携では、Maxifierは日本市場でのローカルサポートとビジネス開発を牽引、MediaMathは本社での日本対応の専門部門の設置という連携をとることで、日本市場に大きなメリットを提供できると考えています。過去の経験から、米国のベンダー企業が日本支社を立ち上げる際の成功要因は、ローカルで優秀なスタッフを採用することと、本社に専属担当を置く事だと言えます。一般的に、米国企業がローカライズを進める際、プロダクトの対応などは、本社の国際部門がヨーロッパ・アジアなど全ての地域をカバーするので、英語圏または英語に近い言語に優先順位が高くなる傾向にあります。日本でのビジネス立ち上げ当初から、きちんと本社に専属担当を置き、日本からの反応や評価,要望等を本社内でコミュニケーションし、プロダクトに反映させ、日本のクライアントにフィードバックするのは日本でビジネスを確立する上で非常に重要なのです。
ABOUT 大山 忍
ExchangeWire Japan 編集長
米国大学卒業。外資系企業を経て2000年にネット広告効果測定ツールを提供するベンチャーに創業メンバーとして参画。その後、バリューコマース株式会社と合併。
2007年1月にオムニチュア株式会社(現Adobe)に参加、コンサルティングサービスを立ち上げる。ビジネスコンサルタントとして米国のベスト プラクティスを日本の課題やニーズに合わせて提供、ウェブ解析やガバナンス(データ主導の組織・仕組化)に関する執筆・講演を行う。