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ブランド保護の仕組みがDSP普及の鍵。大和ハウスのAd Verification実験ケーススタディ / cci メディア説明会レポート

媒体の枠ではなく、人をターゲティングすることができる広告テクノロジーの台頭により、インターネットのディスプレイ広告におけるブランディング効果の期待が高まっている。一方、配信先が特定できないという現状の技術特性は、ブランドを守る広告主にとって不安を拭いきれない。このブランド保護の問題に対して救世主となりうるのがAd Verification(アド・ベリフィケーション)というサポートツールだ。米国DoubeVerify社のツールを使った大和ハウスの実験ケーススタディをレポートする。

広告主・媒体社向けにトータル・インタラクティブ・マーケティング全般のサービスを提供しているサイバー・コミュニケションズ(以下cci)が7月18日に開催したメディア説明会では、新機能を搭載したアドネットワーク“ADJUST”の説明や、TwitterやFacebookの新しい広告商品などが活用事例を交えながら紹介された。

その中で、大和ハウス工業 総合宣伝部デジタルメディア室 室長の大島茂氏がゲストとして登壇したAd Verificationサービスの活用事例をレポートする。

■  CPAの効果だけでは評価できないブランドキャンペーン 

大和ハウス工業は、第三者配信プラットフォームを使って、ブレミアム枠とアドネットワークで広告プロモーションを行っている、日本では先進的なブランド企業の1社である。常に新しい可能性に目を向けている大島氏にとって、アドエクスチェンジやDSPは媒体ではなく、人に対して配信できる仕組みとあって、非常に興味があるという。特に現状のプレミアム枠やリスティングへの出稿に対し、より配信単価を抑制し最適化を図ると言う点で期待が大きい。しかしながら、今までDSPの実施に二の足を踏んでいた大きな理由が『ブランド保護』に対する懸念であった。

大島氏は、ブランド企業は媒体の選定だけではなく、コンテンツ内容まで気を配って広告出稿しなくてはならないと強調する。例えば、プレミアムのニュースサイトでも、東日本震災で家が壊れたというニュース面では、住宅を扱うメーカーは広告を出せない。

ところが、一部のDSPの仕組みでは最終的にどの媒体に露出したかはデータとして確認することができないケースもある。どこに広告が掲載されるかはブランドを重視する広告主に取っては最重要課題だが、デジタルの業界の中では、CPAが良ければ何でもいいという風潮が垣間見られると大島氏は指摘する。ブランド効果はCPAでは測れないのだ。

このブランド企業が抱える不安を解消する手段として、今回Ad Verificationのテクノロジーを使った広告配信の実験に大和ハウスが協力したということだ。

 

■  Ad Verificationとは? 

次に、cci取締役 新広告商品企画室 室長 広屋氏が登壇し、Ad Verificationテクノロジーについて概要を説明した。 

米国IAB(Interactive Advertising Bureau)の定義によるとAd Verificationとは、“オンライン広告配信での1つ以上の配信属性が、広告主と代理店によって定義され、かつ、広告キャンペーン条件の一部として合意された方法と整合して実行されているかを確認しようとするプロセス”である。すなわち、広告主が意図した配信先に広告が表示されているかチェックするためのテクノロジーとサービスと言える。確認対象としては、広告掲載サイトの内容や広告掲載位置、地域ターゲティングやサイズなどがあげられる。

Ad Verificationが担う役割は、Brand Safety (ブランド保護)とEngagement (エンゲージメント測定)の2点である。

BrandSafety (ブランド保護)では、広告主の意図している箇所に広告が露出しているかレポートを提供し、掲載箇所の条件が合っていない場合には配信そのものをブロックする方法で、広告主に安心を提供する。

このBrandSafety (ブランド保護)の鍵となる技術は大きく分けて2つある。ひとつは、アドネットワークやエクスチェンジが多段に交わり、広告が複雑に呼び出されたとしても、おおもとの呼び出しページがどこかを特定する技術。もうひとつが、ロボットにクローリングさせ、Safetyの概念でページを仕分けしたデータベースだ。このデータベースをもとに、広告配信先のページが広告主の意図に則しているかどうかを判断する。

Engagement (エンゲージメント測定)では、Viewable impressionというブランディング広告に適した広告掲載の新しい指標を提供している。IABの定義によると、広告クリエイティブの面積比で5割以上が1秒以上見られたときに、広告表示を1 viewable impressionと呼ぶとのことだ。

 

■  米国でのAd Verification活用事例

DoubleVerify社のTrust Indexによると、米国のアドエクスチェンジによっては数割ものブランドに不適切な在庫が含まれており、広告の無駄うちが発生しているという。これら不適切サイトへの露出をレポートまたはブロックするために、米国では様々なサービスが提供されているというわけだ。

Ad Verificationの活用事例として、大手自動車メーカーの例が紹介された。3億インプレッションのキャンペーン内でAd Verificationをした結果、3,000万インプレッションが不適切コンテンツとしてブロックされた。これにより、このキャンペーンでは約20万ドルの媒体コスト削減に成功したという。Ad VerificationのコストはCPMベースで課金されるが、削減された媒体コストの17分の1のコストで済んだため、実質17倍の費用対効果があった事になる。

 

■  大和ハウスのAd Verification実験におけるブランド保護効果 

今回実施された大和ハウスのAd Verification実験では、米国DoubleVerify社の『BrandShield』という製品が使われた。DoubleVerify社は米国市場におけるAdVerificationのトップシェアを誇り、Fortune 500の約200企業に導入されている。同社のAd Verification製品は月間500億インプレッションを処理している。

今回、大和ハウスの実験は2段階に分けて実施された。第一弾は、2012年5月に560万インプレッションのキャンペーンを対象にAd Verificationを実行した。その結果、大和ハウスが事前に定義したポリシーに不適合なサイトと、安全性が不透明なサイトとして約3割の広告配信がブロックされた。

第二弾は、2012年7月の500万インプレッションのキャンペーンを5月の結果データに基づき最適化が行われた。5月のキャンペーンでは、ポリシー不適合の9割が上位13ドメインのサイトが占めていることが判明したため、これら13ドメインをアドネットワーク上で配信禁止設定を行った。その結果、全体の2割程度あった不適切な配信カテゴリが約3分の1に圧縮され、配信先を最適化することにより媒体費の有効活用率を向上させることができた。

cci広屋氏は、この大和ハウスのケーススタディをもとに、通常のクリックやコンバージョンに基づく広告最適化に加えて、ブランド広告主に対して、AdVerificationを使った配信先の最適化(ブランド保護のPDCA)を提案している。

Ad Verificationによる配信最適化PDCAサイクル

1)      Plan(配信計画):Exchange およびVerificationのキャンペーンポリシーの設計

2)      Do(配信実施):Exchange配信およびAd Verification実施

3)      Check(結果分析):キャンペーンポリシー適合状況の把握

4)      Action(配信最適化):ポリシー不適合媒体を配信禁止にすることで、適合カテゴリへの配信が増える

 

最後に、大和ハウスの大島氏は“ブランド企業として絶対不適切なサイトに露出しないためにも、それを担保する仕組み”としてAd Verificationの効果を評価しつつ、現状Ad Verificationを受け入れてくれる媒体が少ないと苦言を呈した。

現在、日本市場ではようやく主要な広告テクノロジーが顔を揃えてきたところではあるが、それらを活用してビジネスのメリットを生み出すためには、ツールを活用できる人材の確保や、媒体社・アドネットワークの協力のもと広告主が安心して出稿できる環境を構築することが急務である。

ABOUT 大山 忍

大山 忍

ExchangeWire Japan 編集長

米国大学卒業。外資系企業を経て2000年にネット広告効果測定ツールを提供するベンチャーに創業メンバーとして参画。その後、バリューコマース株式会社と合併。
2007年1月にオムニチュア株式会社(現Adobe)に参加、コンサルティングサービスを立ち上げる。ビジネスコンサルタントとして米国のベスト プラクティスを日本の課題やニーズに合わせて提供、ウェブ解析やガバナンス(データ主導の組織・仕組化)に関する執筆・講演を行う。