スマホ広告市場の変化の予兆か、ファンコミ15年1-3月期決算発表は、nend売上成長率が低下、A8.netは想定を上回る成長で二桁成長を達成
アフィリエイト最大手のファンコミュニケーションズが11日、2015年1-3月期決算結果を公表した。連結売上高は82億7200万円、前年同期比13.1%増、営業利益は14億4800万円、前年同期比12.7%増といずれも二桁成長となったが、前期の2014年10-12月期と比べると、成長率の落ち着きが見られる。
〈ファンコミュニケーションズ 2015年1-3月期 連結 四半期売上〉
<ファンコミュニケーションズ2015年12月期 第1四半期 決算説明資料より>
スマホアドネットワークnendの成長率が鈍化、背景はユーザー獲得コスト上昇とスマホアプリゲーム大型タイトルリリースの不在
売上の内訳をみると、前四半期の14年10-12月期に、前年同期比47.2%増と高い成長率を達成したモバイル向けアフィリエイトサービスカテゴリの売上成長率が、今期(15年1-3月期)は9.7%増にとどまり、前四半期(14年10-12月期)売上を下回る結果となった。該当カテゴリの今期売上は40億9000万円、前四半期売上は47億9200万円である。
〈ファンコミュニケーションズ 2015年1-3月期 単体 四半期売上〉
<ファンコミュニケーションズ2015年12月期 第1四半期 決算説明資料より>
〈ファンコミュニケーションズ 2014年10-12月期 単体 四半期売上〉
<ファンコミュニケーションズ2014年12月期 第4四半期 決算説明資料より>
モバイル向けアフィリエイト広告サービス売上は、スマホ向けアドネットワーク大手サービスとして知られるnendの売上が8割以上を占めている。成長率の落ち込みは、nendの売上成長が鈍化したことが主要因となった。
このことに関して、ファンコミュニケーションズは、「売上高上位の広告主の獲得コスト上昇による予算未消化や大きな予算を持った新しいゲームタイトルのリリースがなかったこと」を要因として挙げている。
スマートフォンアプリゲームを中心とするプロモーション需要を取り込み、急速に売上成長を遂げて、スマートフォン広告市場の急成長をリードしてきたnendの売上トレンドの変化は、市場におけるスマートフォン広告の需要動向に変化が起こっていることを想像させられるデータである。
ただ、スマートフォンアドネットワークの需要動向は特定の大手広告主に左右されやすい特性があり、同社のコメントにある「大きな予算を持った新しいゲームタイトルのリリース」があれば、再び売上は高い成長軌道に戻る可能性はあるという見方も出来よう。
<ファンコミュニケーションズ2015年12月期 第1四半期 決算説明資料より>
アフィリエイターからの強力な支持を背景に堅調に拡大するアフィリエイト事業、スマホからの成果報酬比率は約5割に向かう
一方で、同社のパソコン向けアフィリエイト広告サービス売上に該当するA8.netの売上は、想定を上回る売上となり、過去最高売上を更新した。
なお、同社が定義するパソコン向けアフィリエイト広告サービス売上には、A8.netを通してスマートフォンに配信されるアフィリエイト広告も含まれている。A8.net売上に占めるスマートフォンからの成果報酬比率は2015年3月時点で42.8%、前年同月(30.1%)から、12.7ポイント上昇した。このトレンドが今後も継続すれば、近いうちに5割に達することとなる。
<ファンコミュニケーションズ2015年12月期 第1四半期 決算説明資料より>
<ファンコミュニケーションズ2015年12月期 第1四半期 決算説明資料より>
2015年2月にアフィリエイトマーケティング協会がアフィリエイトサイト運営者3103名を対象に実施(※)したASPサービスに関するアンケート調査結果においてA8.netは利用率が第1位、そして満足度率(利用者中「とても満足」と回答した回答者の割合)は、第3位上位にランクインした。
※アフィリエイトB、バリューコマース、A8.net/Moba8.net、アクセストレード、レントラックス、アドバック、リンクシェアの7社協力により実施。
これらの調査結果は同社のアフィリエイト広告売上が、安定していることの理解を裏付けるものとして見ることも出来よう。
<アフィリエイトマーケティング協会 アフィリエイト・プログラムに関する意識調査 2015年より>
ABOUT 野下 智之
ExchangeWire Japan 編集長
慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。
国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。
2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。