Adjustと共にCTVとメタバースの未来を語る―ABEMA、FOD、HIKKY、ミラティブ、cocone connectが登壇

モバイルマーケティング分析プラットフォームのAdjustは6月23日、都内にて、モバイル業界関係者を対象としたイベント「Adjust Summer Party」を開催した。
(Sponsored by Adjust)
 
Adjust社の顧客やパートナー企業が集った本イベントは、六本木ヒルズ森タワーの展望台と同じ階にある夜景の見えるレストランで実施。ネットワーキングの場の提供とともに、各分野の第一人者を招聘してコネクテッドテレビやメタバースの最新動向についての議論が展開された。
 
広告在庫の3割はCTV
イベントの前半には、adjust株式会社ゼネラルマネージャーの佐々直紀氏による司会進行の下で、株式会社AbemaTVのシニアプロダクトマネージャーを務める綾瀬龍一氏と株式会社フジテレビジョンの編成制作局コンテンツ事業部主任として動画配信サービスFODのマーケティング責任者を担当する村上正成氏とともに「CTV市場のトレンドとCTV広告の可能性」と題したパネルディスカッションが開催された。
 

 
綾瀬氏は、国内コネクテッドテレビ広告市場が急成長を遂げており、2021年から2025年にかけて市場規模は約5倍に達すると予測する市場調査の結果を報告。マーケティングチャネルとしての利用率が急激に高まっていくとの見通しを伝えた。尚、ABEMAやFODといった動画配信プラットフォームでは、PCやスマートフォンを含む様々な端末に対して配信を行っているが、ABEMAでは既に広告在庫全体の3割がコネクテッドテレビに配信されており、またFODもコロナ禍でコネクテッドテレビによる利用が浸透し、現在では視聴時間が1.5倍に伸びたという。
 
さらに綾瀬氏は、そのような背景を踏まえるとコネクテッドテレビの広告活用は重要性が日々増してきているとし、より多くのマーケターにコネクテッドテレビを活用してもらえるよう今年夏に「ABEMA Ads CTVパッケージ」というコネクテッドテレビに特化した広告パッケージを提供し始め、さらにはコネクテッドテレビ特化の広告フォーマット開発も進めていると、広告商品開発の背景についても言及した。
 
CTVではサプライサイド優位か
また佐々氏は、画面上にQRコードを配置したコネクテッドテレビ広告の具体的事例を紹介。これまで地上波テレビではあまり見られなかった、刈り取り型広告との相性の良さを特徴の一つとして挙げた。これを受けて綾瀬氏は、スマートフォンを片手に持ちながらコネクテッドテレビを視聴する傾向を念頭に置く必要があると指摘。村上氏は、かつて「スマートフォンの画面に合わせた広告クリエイティブの制作」が推奨されたように、今後はコネクテッドテレビ向けの様々なノウハウが構築されていくのではないかと予想した。
 
さらに村上氏は、従来のCTV広告では、手元にあるスマートフォンで成果が出ていたとしても、それを捉えることができず、効果は出ていそうという感覚はあるものの、広告の精緻な効果測定ができなかったことに課題を感じていたとし、AdjustがコネクテッドTV広告計測機能の提供を開始したことを高く評価。また綾瀬氏は、これまでのモバイル広告では広告IDなどの情報をデマンドサイドが有効活用してきたのとは対照的に、そのようなエコシステムが整備されていないコネクテッドテレビ広告におけるターゲティングでは動画配信プラットフォームが保有するファーストパーティデータの重要性が高まるとの考えを示した。具体的にはABEMAでは、アンケートなどを通じて取得されたデモグラフィックデータやテレビ視聴データをファーストパーティデータとして保有しており、これらを活用していただくことで、効率性とリーチ力を両立した配信が可能である、と言及した。
 
メタバースをいかに活用すべきか
後半部は「メタバースの今と未来」と題したトークセッションが開催された。adjust株式会社のHead of Customer Successを務める岡田雄伸氏が「アプリ事業者はメタバースを今後どのように使っていくべきか」との問いを投げかけると、VRイベントの来場者数におけるギネス世界記録を樹立した株式会社HIKKYのCEO舟越靖氏は、アプリやECといったように領域を限定するのではなく、リアルイベントに相当する総合的な活用を推奨。また一般的にはECとの相性が悪い高単価の商品も、メタバース空間であれば販売できているといった現状を報告した。
 

 
スマホゲーム配信者数で日本一のゲーム配信サービス「Mirrativ」を運営する株式会社ミラティブ代表取締役の赤川隼一氏は、「バーチャル空間におけるコミュニケーションのハードルが下がってきている」一方で、「ユーザーはメタバースであるという理由でサービスを利用するのではない。楽しいから使うということを忘れてはいけない」と提言した。キャラクター着せ替えアバターアプリ「ポケコロ」を開発したココネグループのの栗原孝明氏は「リアルよりバーチャル空間の方が大事」という価値観への理解の必要性を求めた。
 
パラメーターのない商品は劣化しない
またメタバースを活用したサービス設計のあり方について、舟越氏は「熱量が高いユーザーは、常に新たな面白いことを求めて彷徨うので、特定のプラットフォームに居座ることない。無理やりコミュニティを形成してユーザーを囲おうとしても上手くいかない」と指摘した。この意見に同意を示した赤川氏は、ユーザーが有効活用できるツールと、サービスに没頭できるきっかけや口実作りが重要であると発言。具体例として、ゲーム実況を行うことに恥ずかしさを覚えるユーザーに対して、様々なインセンティブを設ける施策などを挙げた。
 
さらに栗原氏は、ロングセラーとなったゲームアプリでは、強敵が次々と登場した結果として、初期に購入したアイテムの価値が相対的に減り、長期的なファンが離脱してしまう事例に注目。このような事態を避けるには、「強さ」など定量的な指標だけでなく、「可愛さ」や「愛おしさ」といった魅力の発掘にも注力すべきだとした上で、「パラメーターのない商品は劣化しない」との持論を述べた。
ABOUT 長野 雅俊ExchangeWireJAPAN 副編集長

ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。
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