APIが広告業界とデータ活用のあり方を変える|WireColumn
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on 2020年1月09日 inデジタル革命の加速にともない、広告業界における広告代理店の役割も急速に変化しています。デジタル技術の進歩とそれに伴うアドテクノロジーの台頭によって、広告代理店の役割はこれまでと違い、先行きの見えないものになっているのです。しかし、API(アプリケーション・プログラミング・インターフェイス)というソースが、広告代理店にとっての希望となるかもしれません。
APIとは、The Trade Deskのようなソフトウェアプラットフォーム上に様々なサービスを構築可能にする技術的なプロトコルです。例えば、フードデリバリーアプリを使って、現在地から近くのレストランを表示したり、フードデリバリーの配達状況を追跡することをイメージしてください。これはGoogleマップのマッピング機能とAPIで連携しています。
APIはこれまでに多くの産業分野で革新をもたらしています。 Uberは世界中のタクシーサービスと交通サービスに新たな価値観をもたらし、Airbnbは暮らすように旅をするというコンセプトで旅行自体の在り方を再定義しました。そして、Amazonは小売業界と消費者の購買行動そのものを変革しました。これらの革新と同じように、マーケティングや広告もまさに革新の時代を迎えようとしています。
広告代理店はAPIを使った独自のテクノロジーを開発することで、そのビジネス戦略を作り変え、維持することができます。例えば、より多くの広告在庫にアクセスし、ワークフローを自動化してより深いインサイトを得ることで、キャンペーンのリーチを拡大したり、パフォーマンスを最適化することができます。
テクノロジーの進化により、広告代理店とクライアントが収集できるデータを効果的に役立てるためには、APIをより効果的に活用する以外にありません。APIは、インターネットの影の主役です。重要な産業分野において次々と革新が起きている中で、目立たないながらも非常に重要な役割を果たしています。
APIから受ける様々な恩恵
APIの恩恵を受けるのは消費者向けのアプリだけではありません。多くの企業は、競争力を維持するためにそのテクノロジーを活用しています。すでにあるテクノロジープラットフォームに、カスタマイズしたソリューションを組み込むことで、プロダクトを差別化することができます。また代理店はAPIを使った新しい価値を顧客に提供すれば、新しい収益源を確保することが可能です。
APIがあれば、企業は社内で蓄積したデータを、天気や交通量、燃料価格にスポーツの試合結果、さらにインフラの工事状況といった外部のあらゆるシグナルと自動的に組み合わせることができます。
例えば、ある商品在庫を多く抱える小売りチェーンが、その在庫がある店舗の近くにいる買い物客に限定してプロモーション広告を打つこともできます。これは、他の業種や業界でも応用できます。花粉症に効果的な医薬部外品を販売するドラッグストアが、花粉レベルが一定の基準を上回ったときにのみ割引クーポンを配布したり、気温が35度を超えればアイスクリーム屋は道ゆく人に呼び掛けを始めたりといったことができます。
広告代理店もAPIを駆使して自動化することで、様々な仕事のワークフローの問題を解消しています。人間が入力しているExcelシートを自動で入力できるようになれば、多くの組織の生産性は大きく向上するでしょう。
さらには、キャンペーンのテンプレートを作成すれば、メディアトレーダーはキャンペーンを今以上に適切に管理できるようになる上、それぞれのキャンペーンの入札単価を自動で調整できるようにもなります。
データ+ API = 成功
近い将来において広告代理店は、革新的なデータ戦略と、これまで以上の成果を提供するための競争を強いられるでしょう。革新的なデータ戦略とAPIに精通した広告代理店は、そのビジネスモデルをより進化させて、クライアントが広告費用をデジタル戦略に効率的に投下できるようにするために、クライアントの業務の効率化をサポートするようになるでしょう。デジタル戦略をもっとも適した方法で統合し、自動化し、カスタマイズすることで、より高いレベルに導くことができます。
APIの出現により、プラットフォームや広告代理店、そのクライアントのそれぞれの関係性が大きく変わります。従来型の広告業界のエコシステムがAPIによって開かれるならば、プラットフォームは広告代理店やそのクライアントに対して、データドリブン(データ+API)なデジタル戦略の実施と成功を強力に支援するでしょう。時代に即した戦略を取ることができる広告代理店とそのクライアントがこれからの時代を生き抜いていくのです。
ABOUT トロイ ・ヤン
The Trade Desk, Inc.の北アジア担当シニア・バイス・プレジデントとして、中国、香港、日本、韓国の事業を統括。過去15年以上にわたり、様々な業界や市場におけるブランド、広告主、代理店に向けた、経営コンサルティングおよびマーケティング分析の豊富な経験を有する。現職に加え、香港中華総商会(The Chinese General Chamber of Commerce, Hong Kong:CGCC)の主要メンバー、並びに上海の中国人民政治協商会議(The Chinese People’s Political Consultative Conference :CPPCC)の委員を兼任