アメリカに次ぐ転職マーケットを狙え-Indeed Japanの成長戦略とメディックスの取り組み[インタビュー]
世界No.1の求人検索エンジンを誇るIndeed。2013年より日本にも拠点をおき、日本法人を設立したIndeedは、いま人材業界での注目を集めている。
その現状や課題について、Indeed Japanの小西航太氏と、パートナーである広告代理店メディックスの齋藤寛士氏にお話をうかがった。
(聞き手:ExchangeWire Japan 野下 智之)
グローバルでも人材領域ナンバーワンを目指して
― Indeedが日本にくることになった経緯をお聞かせください。
小西氏:求人広告を考えた場合、今後伸びるのはどこかということ、今までのモデルではない特化型検索エンジンには、企業と求職者をダイレクトに結びつける手法やニーズがあるとして、注目されたのがきっかけです。
Indeedが他のリクルートの媒体と競合する恐れもありますが、結局残るのはお客様に選ばれたほうです。
ユーザーとクライアントの両方の総量を増やし、そこからどうやってマッチングの率を高めるかが課題です。肝になるのは集客の独占であって、インターネットでは実現しづらいところではあります。
― 現在では、人材系広告主にとりIndeedは集客チャネルとして不可欠になっていると聞いています。その背景はどこにあるのでしょうか。
小西氏: 一番は、求職者の行動が多様化していることです。以前ならハローワークに行ったり、新聞や求人雑誌を買ったりするくらいでした。いまは検索すればネット上にたくさん情報があります。広告以外でも求人を見つけることができます。これは大きな変化です。
Google Trendで「正社員」を調べると、2011年から2016年の間に倍になっていることがわかります。一方、あるひとつの求人サイトのみで検索した場合のヒット率は下がっています。つまり、どこかひとつのサイトを見ればよいという状況ではなくなっているのです。
安価にユーザーを連れてこられる広告プロダクト
― 広告プロダクトについてお聞かせください。
齋藤氏: 広告代理店から見たIndeedの広告プロダクトは、安い単価でユーザーを獲得できるのが、一番の魅力です。ユーザーの行動が多様化していることや、クライアントによっての違いもありますが広告の効果が概ね高いです。弊社はもともと人材系のクライアントが多く、Indeedさんは今から3年前、2014年の初め頃に接点を持ち、試しに出稿してみたら効果が良かったのです。そこから毎月シェアや売り上げが増え続けています。
小西氏: Indeedは日本で一番求職者が集まる場所だと考えています。実際に、月間1千万人のユーザーに使われています。それをベースに、数多く、安く集客ができるところが我々の最大の価値だと思います。
そもそもIndeedは検索エンジンですから、検索結果にいちばんこだわりを持っています。ユーザー一人ひとりに合った結果を出せるように、人工知能とエンジニアが、ユーザーの求めているものを、一発で提供できるように頑張っています。
齋藤氏: Indeedではダイレクトに求人ページに集客できるということが大きな魅力です。人材系クライアントにおいて、インターネット広告ではYahoo!やGoogleなどの検索連動型広告を利用している企業は多いですが、そちらでは広告からダイレクトに求人ページに集客することは困難です。一方でそれを可能にしているのがIndeedではないでしょうか。
― 人材業界におけるデータフィード活用の背景と現状についてお聞かせ下さい。
齋藤氏: フォーカスされ始めたのは2013年~から2014年にかけてです。インターネット広告で主流になっていた検索連動型広告の次に取り組む施策として、Criteoのリターゲティング広告を実施するクライアントが増えてきました。
Criteoをはじめとしたダイナミックリターゲティング広告という手法では、ユーザーが以前に閲覧した求人案件がバナー広告などで出てきて、それをクリックするとその求人案件のページに飛びますが、そもそも興味のあった案件をユーザーが再び見ることになるので、非常に高い広告効果を発揮します。
効果の高い広告手法として、人材系クライアントではIndeedとCriteoの両方を使っているクライアントが多くなっており、検索はIndeed、リターゲティングはCriteoという使い分けがされています。
― メディックスさんのこの領域での強みについてお聞かせください。
齋藤氏: メディックスはリスティングに代表されるような運用型広告を得意にしています。運用型なので、効果をもっと上げるために検索連動型であればキーワードを追加したり、広告文を変更したりということを日々行っていきます。
― 貴社はデータフィードサービス(M-Feed)を自社開発されましたね。なぜ、自社開発にこだわったのですか。
齋藤氏: データフィード広告では、データフィードをシステムで作成し媒体にアップロードすることになりますが、広告の効果を上げるために、データフィードも定期的にメンテナンスしていく必要性があると考えています。データフィードをメンテナンスして広告運用のPDCAのスピードを速くしたい、と考えた場合、データフィードの作成を外注すると時間がかかってしまってリスティングのような速いサイクルにならないのです。それを速めるためには自分たちでフィードを作れる環境が必要でした。弊社内で作ったのはそういう背景からです。
新規率の高さが強み
― クライアントサイドの通常のサーチ広告などとの使い分けについてもお聞かせください。
小西氏:新規率がIndeedでは高いのです。我々はユーザーを仕事ベースで探すところに持っていき、ユーザーはそこから入って流れますから、サーチ型よりも意図が強いといえます。この点がクライアントから高く評価されています。
今はまだ、日本でIndeedのサービス名、社名を認知してもらうフェーズにいると思います。一昨年からCMを放送しており、「仕事を探すならIndeed」として根付いていきたいですね。ネットの施策も勿論しています。また、いわゆる「一職種・一勤務地」での検索というところでGoogleとの親和性が高く、そのためにSEO的な強さを持っています。
「I help people get job」を掲げているので、Indeedを通じて就職先、アルバイト先が決まったというのが実現したい世界です。日本の場合は特に人材系の媒体様や、派遣会社様のご利用が非常に多い状況です。そこで競合だというと角が立つといいますか、どこに行っても「敵なのかな?味方なのかな?」と言われています(笑)。少しつらいところですが「Indeedはオンリーワンです」と答えたいですね。
派遣会社様や媒体社様にとっても、サーチなどいったさまざまな集客施策があると思うのですが、そこにIndeedが現れて「比較的効率がいいな」というイメージを持っていただいていると思います。
一方で、例えばコンビニのような事業者様は、我々のお客様である各種求人媒体様にお金を払っているところから、Indeedに直接依頼に変更される場合もあるので、我々のお客様も競合になる、構造としてはそういう感じです。
売り上げの中心は求人媒体様で、比較的日本は求人媒体の売上比率が日本と比べると高いです。
リスティングから年々予算がシフト
― Indeedの活用事例を教えていただけますか。
齋藤氏:弊社で広告運用をさせて頂いている某人材系企業様では、年々予算を検索連動型広告からIndeedやCriteoにシフトされている状況です。これは結構顕著で、予算の6割がIndeed、2割がCriteo、残りの2割がYahoo!やGoogleの検索連動型広告ですから、かなりドラスティックな変化です。このようにシフトしているのは、Indeedが効率のよい媒体だからです。
小西さんがおっしゃっていたように新規率も高いですし、今まで自社のサイトを知らなかったユーザーがGoogleで検索して、知らぬ間にIndeedに来ていて、知らぬ間にIndeedの中の広告を踏んで、それが集客につながっているという状況で、まったく今まで未接触のユーザーが来ているのです。
リスティング広告は始まってから10数年たってある程度洗練されてきていて、広告の単価感が年々高くなってきています。そうなると利益が出ないくらいまで単価感が上がっているというところが実際あるのです。その中でIndeedはリスティング広告と比較すると実施企業はまだ少なく単価感もそこまで高騰していませんし、対象とするユーザーも顕在化しているユーザーですので、非常に効果の出しやすい媒体だと思っています。
― 日本におけるIndeedの普及活動、組織や販売体制、今後の事業戦略をお聞かせください。
小西氏: 前提としてはIndeedを「仕事を探す時にIndeed」と思っていただける求職者のかたを増やすということが大命題だと思っています。
お客様側においても、今まではいわゆる人材会社様、媒体様で、紹介会社様、派遣会社様とのご利用の割合が高かったのですが、直接Indeedを使いたいというお客様の声も増えてきました。ですから、Indeedをわかりやすく伝えるという部分を強化しなくてはなりません。具体的には「How to use Indeed」、Indeedの使い方の動画などを展開していきたいとは考えています。
また、販売体制においても、代理店様の持っているノウハウは非常にレベルが高いので、メディックス様のようなパートナー様との密な関係を持ち、お客様がより細かい運用や、効果の速いPDCAをお求めの際にはお答えします。一方で、お客様が「自社で勝手にやりたい」とおっしゃられる場合には、弊社の直販担当がサポートに行ける体制もあります。お客様の方で販売チャネルを選んでいただければと思います。
比較的大手の人材系の会社様は、パートナー様を使って運用されるケースが多いですね。データフィードを活用し、より細かい運用をする時に、内製化するのは大変だということでしょう。
日本でもIndeedをもっと普及させるために、営業の人数は一定数まで増やす計画です。
― メディックスさんの人材クライアント向け提案の現状と今後についても、教えていただけますか。
齋藤氏: 求人情報を探している人を集客する手段は、数年前より増えていると非常に強く感じています。数年前には検索連動型広告がひとつの軸としてありましたが、今はまさにIndeedさんが台頭してきたり、Criteoなどの媒体も増えてきたりと、クライアントにとっては選択肢が広がっています。
ノウハウを積み重ねることこそ課題
齋藤氏: 今までは特に、運用型広告の代表的な手法であるリスティング広告において、効果を改善するためのノウハウを貯めてきました。一方で、最近ではリスティング広告だけでなく色々な広告メニューが登場してきており、それらのノウハウをすぐに身に付けるのは難しいと思います。弊社でも取引が拡大しているIndeedはまさに最優先の手法で、これからさらにその運用ノウハウを積み重ねることが重要だと思います。
ただし、リスティング広告で経験したノウハウは非常に活かすことが出来ると考えています。なぜなら、広告を出稿し、データを見てその傾向を分析し、改善施策につなげていく、というPDCAは非常に共通するものがあると感じるからです。
小西氏: 代理店さんに対してIndeedをこんなふうに運用してほしい、というのはありません。そこは代理店さんごとに色や強みが出るところですから。ただ、メディックスさんは運用型広告を長くされていらっしゃるので、弊社の傾向をつかまれるのも早く、お客様によりよい提案をしていただけていて、その結果として、お客様に効果をお返しいただき、Indeedシェアを高めていただいています。
日本はアメリカに次いで大きなマーケット
小西氏:売り上げはグローバルレベルの傾向でいうと右肩上がりで、日本でも伸び率自体はさほど変わりありません。現状、売り上げでいうと1千億をIndeed単体で越えてきている状況です。(※リクルートHDのIR報告書に記載)
この伸び率を保ちつつ、日本はアメリカに次いで大きなマーケットなので、Indeedの次の成長を担いたいと考えています。
ABOUT 野下 智之
ExchangeWire Japan 編集長
慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。
国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。
2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。