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デジタル広告とデータ活用-第3回 ラストクリック信仰からの脱却~マーケターがデジタルマーケティングにおいて進むべき次のステップ~AdRoll “Roll with Us”イベントレポート [PR]

 
 
AdRollが10月21日に広告主を対象に開催したイベント“Roll with Us”を開催した。

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イベントの構成は、AdRollのプラットフォームを活用し、広告主がどのようにマーケティング戦略を実行するかについて、同社のプロダクトについて、そして現在マーケティングオートメーションの領域で連携を進めるMarketo社からゲストスピーカーを招いての講演というもの。

column_AdRoll_image2基本的には、同社のプロダクトを基軸としたコンテンツが中心であるが、単なるAdRollのプロモーショナルなメッセージにとどまらず、現在マーケッターがデジタルマーケティングにおいて陥りがちな最適化の罠にどのように向き合っていくのか、あるいは現在広く普及するリターゲティング広告には、ラストクリックコンバージョンの獲得だけではない活用方法があることを、改めて企業のマーケターに対して投げかけた内容であった。
 
 

あなたがお持ちのデータをもっと活用しましょう~AdRollがいま最もマーケッターに伝えたいシンプルなメッセージ~

AdRoll株式会社 代表取締役社長  香村 竜一郎氏

AdRoll株式会社 代表取締役社長
香村 竜一郎氏

冒頭、AdRoll株式会社 代表取締役社長 香村 竜一郎氏が登壇し、AdRollの創業者Aaron Bell氏の経歴、AdRollを創業した経緯についての紹介。Aaron Bell氏は、高校生の時マイクロソフトでエンジニアリングを経験、その後スタンフォード大学でコンピューターサイエンスを学び、NASAのスペースシャトル打ち上げのアルゴリズム開発に従事するという異色の経歴。その後Google AdWordsのアルゴリズムに共感し、ディスプレイ広告の世界でも同様のプラットフォームを作り広告主の大小を問わず使ってもらいたいという想いのもと、2007年にAdRollを創業した。

香村氏は、「とにかく愚直にまっとうなことをしていくというのが当社のカルチャーである。」とし、この思いが製品開発や組織の在り方、社内の人材評価に生かされていると、同社の社風について紹介した。
そして「AdRollが今マーケターに対して最も伝えたいこと、それは“あなたがお持ちのデータをもっと活用しましょう”ということです。」と述べた。

近年米国でトレンドとなりつつある「People Based Targeting」という言葉を挙げ、デバイスの多様化が進む現在では、クッキーベースではなく、一人のユーザーに対し、一貫したメッセージを、順序立てて伝えていくことが出来る、ユーザーをベースにしたターゲティングの重要性を語った。また、それを実現するのが「データとKPI」という二つのシンプルなものであるとし、広告主が持つファーストパーティデータと、広告配信プラットフォームが持つ、ダイナミックなインテントデータを適切に連携させることの重要性を強調した。

※ファーストパーティデータ、サードパーティデータ、インテントデータ、スタティックデータに関する解説は、第1回コラムをご参照ください。
 
同氏はまた、現在日本で多くの広告主がKPIとしてラストクリックのCPAを設定していることに言及、「インターネット広告の85%のクリックは全体の8%のユーザーにより生成されている。そもそも広告をクリックするユーザーは全体の16%しかいない。クリックをしない84%のユーザーは広告を見るだけである。クリックをしているユーザーをターゲットするだけでは、ビジネス拡大の機会を喪失している(*1)」と述べ、これを打開する方法としてビュースルーコンバージョン(VTC)をKPIとして設定すること、アトリビューションマネジメントを導入することの必要性を説いた。

(*1) 出典:comScore

だが「日本のマーケッターの約67%がまだアトリビューションのモデリングを出来ていない」と、その設計や運用が複雑であるという課題にも言及した。(*2)

「アトリビューションのモデリングには正解がない。だがトライアンドエラーにより自社に最適なアトリビューションを探しあてることが必要である。」とし、「アトリビューションのモデリングには、ラストクリックなど一つのKPIを設定するシングルタッチポイントのものと、二つ以上のKPIを設定するマルチタッチポイントのものがあるが、後者を導入することが今後必要となってくる」とそのエッセンスを語った。

(*2) State of the Industry Japan レポート: https://www.adroll.com/ja-JP/resources/reports/state-of-the-industry-jp

 
 

AdRollが提唱するリターゲティングの本質的な価値~フルファネルへのアプローチによってもたらされる持続的なユーザー醸成~

AdRoll株式会社 戦略事業部担当ディレクター 山内 諭氏

AdRoll株式会社
戦略事業部担当ディレクター
山内 諭氏

続いて登壇した戦略事業部担当ディレクター 山内 諭氏からは、AdRollのプロダクト戦略とソリューションについての紹介。
同氏は、「AdRollは広告予算の規模に関わらずすべてのお客様に対して最適な広告ツール、最適なパフォーマンスとサービスレベルの提供を目指してきた」と述べ、コアプロダクトであるフルファネルソリューションのリターゲティング広告について紹介した。同社のリターゲティング広告は、ラストクリックをKPIとするものではなく、購買ファネルの潜在層、比較検討層、顕在層すべてのファネルに対して、アプローチするソリューションであると、他社プロダクトとの違いを強調、「広告主の商品・サービスに対する興味のレベルに応じてユーザーを醸成していくソリューションとして提供している。」と同社プロダクトについて紹介した。

また、同社の新プロダクトであるAdRoll Prospectingについて紹介。Prospectingは、広告主データから、広告主の顧客の行動パターンを把握し、これと同社がインテントマップと呼ぶ10億件以上のプールされたデータの中から、顧客の行動パターンと近いユーザーを親和性が高い潜在ユーザーとして抽出し、フルファネルの各ステージに応じたリターゲティング広告の配信を行うという仕組みを持つ。また親和性の高いユーザーの判別において、同社のアルゴリズムであるBidIQというアルゴリズムが用いられる。

同氏はFacebookとの関係性についても触れた。AdRollは、Facebookのマーケティングパートナーとして、“アドテクノロジー”、“Facebook Exchange(FBX)”、“スモールビジネスソリューション(SBS)”の三領域でFacebookのパートナー認定を受けており、現在最新のSBSの領域で認定を受けているのは世界でも同社を含め2社のみであると述べた(*3)。そして、今年10月より外部業者APIによる広告配信が可能となったInstagramに関しては、Facebook社が作成した今後のロードマップに沿って30秒動画広告、カールセル広告へも対応を進めていくとした。
また、Facebook以外にも、TwitterやGoogleをはじめ、500以上のネットワークとつながっているプラットフォームと連携しているとした。

(*3) as of 11 November 2015

 
 

マーケティングオートメーションとの連携に実現する“適切なメッセージの適切なターゲット配信”

株式会社マルケト バイスプレジデント 小関 貴志氏

株式会社マルケト バイスプレジデント
小関 貴志氏

続いて登壇したマーケティング担当執行役員中村 晃氏からは、マーケティングオートメーションを活用したソリューションモデルに関する紹介がなされた。同社はマーケティングオートメーションの領域においてMarketoと連携を行っており、その仕組みについて解説を行った。
AdRollとMarketoの両プラットフォームをAPI接続させることで、Marketoのスマートリストと呼ばれる、クライアントのCRMデータを独自にセグメンテーションした顧客データをAdRollの広告プラットフォームに流し、広告配信をすることが可能となる。

同氏はマーケティングオートメーションにおいて、「適切なメッセージを適切なターゲットに届けることが重要である」と強調。二つのプラットフォームの連携により、メール配信などとディスプレイ広告配信とのキャンペーンの連動、リードの行動把握、カスタマージャーニーの把握という、三つの効果を得られるとした。
 
 

Marketing Firstの思想のもと、理想的な連携により真のOne to Oneマーケティングを実現

中村氏の話を受けて、ゲストスピーカーとして株式会社マルケト バイスプレジデント 小関 貴志氏が登壇した。Marketoの設立はAdRollと同じ年の2007年、米国サンマテオに本拠地を置く。マーケティングオートメーションツールベンダーとして日本でも注目を集めるMarketoは、AdRollと同様にユーザーのフルファネルを対象とするソリューションツールとしてグローバルで4,100を超えるクライアントに導入されている。同社は「Marketing First」を社是として掲げており、これは「マーケッターが同社の一番の顧客であり、マーケッターがいちばん使いやすいツールを提供すること」(小関氏)という同社のサービス提供に対する想いが込められている。
日本での展開開始は2014年6月、以来クライアント数は当初の予想を上回り、既に140社を超えたとのこと。小関氏は「クライアントは、現在持っている顧客リストを有効活用したいというニーズが、業種業態を問わず確かにあることに、ビジネスの手応えを感じている。」と、これまでの日本でのビジネスを振り返った。

左:AdRoll株式会社マーケティング担当執行役員 中村 晃氏、 右:株式会社マルケト バイスプレジデント 小関 貴志氏

左:AdRoll株式会社 マーケティング担当執行役員
  中村 晃氏、
右:株式会社マルケト バイスプレジデント
  小関 貴志氏

小関氏は「顧客ごとにパーソナライズ化されたコミュニケーションを行い、ROIの最大化を行うことの必要性は、理論上は誰もが理解している。だがこれを現実に実行する際、組織間の課題や作業量の膨大化による課題に誰もが直面する。これをどのように解決して実行に落とし込み目標達成をしていくか、あるいはマーケティング施策の効果をどのように可視化してPDCAサイクルを回していくか、ということをITツールで支援するのがMarketoの役割である。」とMarketoが提供するサービスの意義について語った。
そして「MarketoはプライベートDMPと呼ばれることもあり、クライアントの顧客データをJAVAScriptを埋めたWebサイト、オフラインのCRMデータなどから収集し、これをセグメント化、ナーチャリング、スコアリング化、興味の範囲を明確にし、様々なチャネルで顧客とコミュニケーション図ることを実行するサービスである」と、機能について説明した。

MarketoとAdRollとの連携の背景については、「両社とも、得意なところに特化してクライアントに良いものを提供するというサービスポリシーに共通点がある。」とし、「本当のOne to Oneマーケティングは、Marketo単体ではできないが、AdRollとの連携により実現できる」と語った。

また小関氏と中村氏(AdRoll)とのQ&Aセッションでは、「Marketoでどのようにセグメンテーションを切るのが望ましいか」と中村氏から質問を受けた小関氏は「セグメンテーションは、マーケティングのゴールをどこに持っていきたいかにより何を見たいかということになる。一般的には顧客属性により切るのが良い。ただし属性には限界があり、関心の度合いにより購買可能性は変わる。これについてはWeb上での視聴状況や資料のダウンロードの有無などの行動を見て、それに応じてセグメントする必要がある。また、ホットさ、すなわち時間軸でみた活動頻度ということも、大きな切り口である。」と具体的なTIPSを交えて応じた。
 
 

規模の大小を問わず全てのクライアントに使っていただくことこそがAdRollのミッション

AdRoll株式会社 広告代理店事業担当執行役員  伊東 裕揮氏

AdRoll株式会社 広告代理店事業担当執行役員
伊東 裕揮氏

最後の登壇者、広告代理店事業担当執行役員 伊東 裕揮氏は「日本におけるベストプラクティスのご紹介」と題したセッションにおいて、データ連携の重要性について改めて強調、「当社がリターゲティングというソリューションで本当に取り組みたいのは、ユーザー行動を読み取り、ユーザーの興味・関心度の強さを判別し、それにより適切な顧客に適切なメッセージを出すというソリューションを、広告主の規模の大小を問わずすべての顧客に使っていただくということ。」と述べた。
AdRollの特徴は、「誠実さ、透明性の高さ、顧客との長期的なパートナーシップ」であると述べ、今年3月にサービスをローンチして以降、グローバルプロダクトをしっかりと日本の市場に落とし込んでいくことに注力してきたことについて、配信先のインベントリーの推移や、直近四半期の広告クリック数、CTR、CPCなどの各指標などの指標の改善や、売上、クライアント数の飛躍的な伸びを引合いに出しながら、その成果を報告した。

 

 

 

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長  

慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。

国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。

2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。