バーチカルメディアの特性を活かして少数精鋭でプログラマティック部門を運営するカカクコム <インタビュー>
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on 2014年9月11日 in価格比較サイト「価格.com」、グルメコミュニティサイト「食べログ.com」など、多数のサイトを展開している株式会社カカクコム。ExchangeWireが9月に開催するイベント「ATS Tokyo 2014」では、ケーススタディのセッションに営業本部営業企画部長の荻島啓介氏が登壇する。セッションに備えて、同社の戦略について伺った。
(聞き手:ExchangeWire Japan編集長 大山忍)
少数精鋭で全サイトのプログラマティック部門を運用
--まず、荻島様の現在の役割と責任範囲を教えてください。
荻島:主に価格.comと食べログのサイトで、広告によるマネタイズを横断的に行っております。広告の商品設計から運用までを見て、純広を含む広告全般の最適化、収益の最大化に取り組んでいます。
--収益の最大化のために導入しているテクノロジーについて教えてください。
荻島:導入しているかどうかは別として、例えば動画やネイティブアドといった最新の情報は日々収集しています。DSP、DMP、SSPなど一般的になってきたものは、比較的初期の段階からいろいろ試しています。
--御社のサイトにおける広告商品の基本戦略は?
荻島:価格.comは購入やEコマース、食べログであればレストランの検索と、それぞれカテゴライズがしっかりしているバーティカルなメディアです。ポータルやニュースサイトなどとは違った広告戦略を採っていかないと中々強みが出せません。そのため、初期からターゲットやセグメントを強化した広告商材を強く打ち出して展開しています。
--さまざまなテクノロジーを導入検討する中で、プログラマティックに取り組むに至ったターニングポイントはありましたか。
荻島:メディアとして広告収益を右肩上がりにするには、純広的な商品で埋めつくすのが一番高収益ではありますが、どうしても空き枠や売れない枠がありました。そういった枠でも、テクノロジー、データ、プログラマティックを使えば以前の単価より上げられるということで導入に踏み切りました。
--現在、何名位のチームで運用されていますか。
荻島:プログラマティックやデータ、広告の配信案件に関わっているのは、私を含めて4名位です。メディアの広告マネタイズに関しては、人手をかけたから売り上げが上がるというものでもないので、少数精鋭で運営しています。
--その中で一番重要視しているポイントはありますか。
荻島:テクノロジーを選ぶポイントは、売り上げと運用負荷とのバランスです。ある程度の人数で運用していくことを前提としていますので、導入時はそこを精査しています。
--一番負荷がかかるところはどこですか。
荻島:日々のオペレーションですね。徐々に自動化はされますが、最初のタイミングではどうしても日々手を動かして数字を見ながらチューニングする必要がありますから。
オーディエンスデータを自社サイトだけでなく外部でも活用
--データが採れて可視化できた今、そのデータを新しいマネタイズの手段にする流れがあります。御社では、具体的にはどういった活用をされていますか。
荻島:DMPでオーディエンスの全体像がある程度分かってきました。ここ数年で、データを活用した広告商品として既存の純広などに次ぐ単価でオーディエンスのデータを活用した素材を提供しています。
--オーディエンス拡張によって、広告の単価が上がる取り組みですか。
荻島:従来であればネットワーク、ノンターゲティングで配信されていた広告案件が、オーディエンスの拡張で一段、二段も単価を上げることが出来ています。広告のマネタイズを担当する部隊としては、ビッグデータを集めて細かく分析することに注力するのではなく、売り上げや広告販売に活用していくことが重要だと思っています。
--御社はアフィリエイトを活用されているイメージが強かったのですが、ここから広告枠、データ活用にシフトしていった、あるいは使い分けているポイントはどういった点でしょうか。
荻島:ディスプレイの枠における収益の最大化を考えると、4、5年前はアフィリエイトのバナーを回して稼いでいましたが、そこからネットワーク広告、RTB、プログラマティックといったテクノロジーが登場しました。CPMベースではテクノロジーを利用したほうが収益の高まる傾向になり、そちらに軸が移っているという状況です。
--御社が持つメディアの価値を最大化する為、コンバージョンだけでなく、CPMも商品化できるよう回しているわけですね。
荻島:ディスプレイは別にして、いわゆる広告として売りたいという大前提があります。成果よりインプレッション効果、その面に広告が出ている価値などを評価していただける商材で埋めたいという希望もあるため、そこと収益とのバランスで運用しています。
--CPMモデルに向く広告商材、コンバージョンモデルに向く商材はありますか。
荻島:ページ内でも場所によって使い分けています。ファーストビューにあるような広告価値が高い枠は、より広告的な単価の付け方、売り方でマネタイズしています。一方ファーストビューではなくても、ユーザーが注目しやすくコンバージョンが高ければ、アフィリエイト、CPC、CPAのような商材でマネタイズしています。
--オーディエンスデータを活用されるようになって、新しく発見したものはありましたか。
荻島:データは、サイトの空き枠を高単価で埋めるという発想で進めていましたが、オーディエンスの拡張なら我々のサイトで完結する必要はありません。直近では、我々のサイト外にいたユーザーを配信の対象にした商品を出すことで広告在庫や可能性を広げています。
--御社のサイトのオーディエンスにはどのような特徴がありますか。
荻島:価格.comには、商品を購入したいユーザーが集まります。我々はメーカーや製品の型番といった詳細なデータベースを持っているので、購入意向が高いユーザーをカテゴリーや製品単位でターゲットできます。この掛け合わせが価格.comの強みだと思います。
メディアの特性を活かせるサービスの開発を
--テクノロジーの導入は、どのようなプロセスで進めていますか。
荻島:新しいものはトライアルとして入れて、使えないようであれば止めてしまうこともあります。DSPやSSP、DMPのように複数社が提供しているサービスの場合は、複数を使いながら、どのサービスが我々にとって一番良いのか検証しています。
--実際に予算を取ってくる時、一般的に上司を説得するのが大変だというお話も伺います。御社の場合はどうですか。
荻島:我々は収益源を広告だけに依存しているわけではありません。広告の最適化にいきなり大きな投資をするのではなく、スモールスタートで導入しています。その中で各サービス会社さんには、新しいものを他社さんに先駆けて試験導入する代わりにリーズナブルにしていただくといった交渉も一部ではやっています。このようにしてテストをして経験値的を積ませていただきながら、徐々にコストを掛けて大きく発展させるということをしています。
--今注目されているテクノロジー、或いは今後注力していきたいポイントはありますか。
荻島:プライベートオークション、ダイレクトディールのような、サイトやユーザーの価値をわかっていただける取り引きは収益的に増えています。こういったCPM単価を上げられるところは進めていきたいですね。
--最後に、新しい商材の開発や日々のオペレーションに携わる現場の方として、業界やベンダーに期待することは?
荻島:最近の動画の案件でも、ネットワークを開発したのでメディアとして入ってほしい、といったお話があります。それでは、メディアとしてワンオブゼムになってしまうので厳しいなと思っています。個別のメディアの特性といったものが活かされる商材の登場に期待したいですね。
--広告主さんのニーズがあってこそのマーケットですが、きちんとお互いがWin-Winになれるような環境、サービスが期待されますね。ありがとうございました。
(編集:三橋 ゆか里)
ABOUT 大山 忍
ExchangeWire Japan 編集長
米国大学卒業。外資系企業を経て2000年にネット広告効果測定ツールを提供するベンチャーに創業メンバーとして参画。その後、バリューコマース株式会社と合併。
2007年1月にオムニチュア株式会社(現Adobe)に参加、コンサルティングサービスを立ち上げる。ビジネスコンサルタントとして米国のベスト プラクティスを日本の課題やニーズに合わせて提供、ウェブ解析やガバナンス(データ主導の組織・仕組化)に関する執筆・講演を行う。