プライベートエクスチェンジでネット戦略を前進させるマイクロソフトの取り組み <インタビュー>
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on 2014年8月01日 in日本マイクロソフトでは、日本のブランド広告主として初めてプライベートエクスチェンジを採用し運用を開始している。日本マイクロソフト株式会社のセントラルマーケティング本部デジタルアドリード松田恵利子氏に、マーケティング視点での取り組みの概要などを伺った。
(聞き手:ExchangeWire Japan編集長 大山忍)
プライベートエクスチェンジで商品認知を高める
--まず最初に、松田さんのマイクロソフト社における役割と責任範囲を教えて下さい。
松田:マイクロソフトのB2B、B2Cのプロダクト、サービスを含む運用系のデジタル広告を担当しています。B2CにはWindows、Office、Surface 、B2BにはMicrosoft AzureやMicrosoft Dynamics、Microsoft Office 365などがあります。
--日本の広告主では初の試みとなるプライベートエクスチェンジを実行されました。マーケッターの松田さんが考えるプライベートエクスチェンジとは何なのか教えてください。
松田:ブランドセーフティを担保した上で、私達のメッセージを効率よくお客様に届けることができるものです。ネットワーク広告を推進したいと考えて代理店に提案いただき、特定の媒体に効率よく広告を出稿する手法があると社内に説明して、同意をもらって進めてきました。
--ブランド広告主にとってはやはり、ブランドセーフティが大きなネックとなっているところでしょうか。
松田:その懸念も大分払拭出来てきましたが、最初に大きかったのはそこですね。
--プライベートエクスチェンジで実行されたキャンペーンの目的を教えて下さい。
松田:アウェアネス、商品認知を高めていくことです。特にクラウド、タブレットは弊社にとって新しいサービスでしたので、新しいお客様にどのようにリーチし、かつマイクロソフトが製品を出していること、サービスを提供していることを如何に知っていただくかがゴールでした。
ただ、プライベートエクスチェンジは一般的なネットワーク広告より単価が高くなってしまいます。コンバージョンに直結するようなキャンペーンでは使いにくかったですね。
--コンバージョンがメインなキャンペーンでは、コストがシビアなので不向きです。そこでブランディング的な認知拡大として活用している、というのは新しいと思います。
松田:弊社ではブランディング系の広告は、いかにお客様にウェブサイトへ来ていただくかを評価指標のひとつにしているケースが多いですね。
プライベートエクスチェンジで着実に経験値を積んでいく取り組み
--御社のプライベートエクスチェンジの概要を教えて下さい。
松田:現在の全容がこれです。プレミアムメディア掲載を可能にしたプライベートエクスチェンジとオーディエンスターゲティングを可能にしたDMPから構成されています。
--プライベートのDMPですね。
松田:そうです、マイクロソフト専用のDMPのデータも活用してプライベートエクスチェンジに対してリアルタイムで購入をかけていきます。
--どのようにキャンペーンに適用しているのですか。
松田:私自身は予算を持っていないため、キャンペーンのオーナーの理解を得た上で、取り組んでいます。一般的なアドネットワークではどのサイトに出るか分かりませんが、プライベートエクスチェンジなら掲載面を特定した上で、さらにデータを活用したターゲティングも可能です、といった具合に。
--媒体社の純広用の枠でも、ブランド企業にならプライベートエクスチェンジとして解放していいということで、お互いWin-Winの関係を構築できるということですね。
松田:媒体社にはプライベートエクスチェンジに入ると純広の出稿がなくなるんじゃないかという懸念があるようですが、弊社の場合は純広も使っています。確実に押さえなければならないところは押さえた上で有効活用するという感じで使っています。
いくつかのキャンペーンで適用していますが、プライベートエクスチェンジの媒体社はその時々で変わっています。女性向けのキャンペーンをやる時はそういった媒体社が入るというイメージです。
--まずはやってみながら、経験値を積んでここまで来たわけですね。
松田:社内には、一旦やってみましょうということで、まずは進めさせてもらいました。「なんとなくこれまでとは違う手法で広告をだしていくんだな」という感じでしたが、1つのキャンペーンに適用すると別のキャンペーンへと横展開し、ひろがってきました。
--トライ&エラーで進めるべき部分で、御社のフットワークは軽かったわけですね。
松田:はい、そこはとても恵まれていると思います。プライベートエクスチェンジを実施するために稟議のようなものはなかったので。どちらかと言うと、裁量を持ってやらせてもらっています。かといって、結果が出なかったことを責めることもあまりなく、きちんとP-D-C-Aを回していれば批判されることもありません。
--チェックして次のプランへというサイクルを通してこそ、大きな結果が出せますね。キャンペーンで効果があった点、課題が残った点を教えて下さい。
松田:実はこのプライベートエクスチェンジとオーディエンスデータを重ねると、あまり効率が良くなかったんです。具体的な数字は、今度の9月のイベントで出せるといいなと思っています。
2月から6月末まで実施したWindwosタブレットのキャンペーンですが、まずIT系をターゲットに、プライベートエクスチェンジで1カ月回しました。基本的に弊社のお客様に近しい方々がいらっしゃる媒体が中心でしたので、反応は上々でした。ただ新しいお客様にもWindwosタブレットを知っていただきたいので、女性向け媒体を中心としたプライベートエクスチェンジでの配信を3月から始めました。こちらは、IT系ほど反応は良くありませんでした。
純広のプランニングのような考えになりますが、ターゲットがいないところに出しても反応してくれません。DMPのデータを使ってオーディエンスターゲティングをやろうとしましたが、女性向けの媒体の中にそもそも反応してくれるお客様が少なかったのか、新しいお客様を開拓していくのが非常に困難でした。
その後、プライベートエクスチェンジは解除して、それまでの広告キャンペーンで蓄積したデータを活用したオーディエンス拡張を実施しています。
--テクノロジーは出来ますよと言われても、実際にやってみて調整していく必要がありますね。
松田:本当に取り組んでみて、学べたこともたくさんありました。ぜひこれを今後のメディアプランニングに活かしていきたいですね。
--今後のマーケティング施策ですが、どういったプログラマティックな取り組みを検討されていますか。
松田:今回取り組み始めたオーディエンスターゲティングが有効であることが理解出来たので、さらに拡張していきたいです。また、媒体社が持ってらっしゃっているデータをプログラマティックの領域に活用できるようなスキームができるといいなと思っています。
テクノロジーを入れることがゴールになってしまいがちなのですが、あくまでマーケティングゴールを達成する為の手段として取り組んでいきたいですね。
※編集記:松田さんは9月16日(火)のATS Tokyo 2014のライトニングトークセッション「6 of 6」に登壇、今回のキャンペーン効果を発表予定。
(編集:三橋 ゆか里)
ABOUT 大山 忍
ExchangeWire Japan 編集長
米国大学卒業。外資系企業を経て2000年にネット広告効果測定ツールを提供するベンチャーに創業メンバーとして参画。その後、バリューコマース株式会社と合併。
2007年1月にオムニチュア株式会社(現Adobe)に参加、コンサルティングサービスを立ち上げる。ビジネスコンサルタントとして米国のベスト プラクティスを日本の課題やニーズに合わせて提供、ウェブ解析やガバナンス(データ主導の組織・仕組化)に関する執筆・講演を行う。