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テクノロジーとの組み合わせで発揮されるDMPの真の価値 〜3PAS×DMP〜

DMP(データマネジメントプラットフォーム)はここ数年でデジタルマーケティング業界におけるバズワードとなった。自社のマーケティングデータと外部のマーケティングデータを統合的に格納、分析し、そこから得られる顧客像をもとに、顧客に適切なマーケティングアプローチができる。

最近ではDMPについて説く記事も非常に多く見られるようになった。しかし、DMPは言って見ればデータを格納するだけのただの「ハコ」でもある。あくまでハコでしかないので、それ単独ではマーケティング施策にはつながらない。DMPを中心として、周辺のテクノロジーと組み合わせるからこそ、より力を発揮する。本コラムは数回に渡って、DMPと周辺テクノロジーを「組み合わせる」からこそ実現できる世界について触れていきたい。

 

 

 

第三者配信アドサーバは単体よりも組み合わせ

 

まず第一回目は、第三者配信アドサーバとDMPを組み合わせた世界について説明したい。

第三者配信アドサーバは、数年前からデジタルマーケティング業界でも幾度となく語られるようになった「アトリビューションマネジメント」を実践していく上で非常に重要なテクノロジーである。実際にこの記事を読んでいただいている読者の方の中でも、第三者配信アドサーバを使ってアトリビューションマネジメントを実践したことがある、または検討をしてみたというマーケターの方も少なくないのではないだろうか。何を隠そう、著者の私も前職時代に広告会社という立場で第三者配信アドサーバを活用したマーケティングのご支援に携わらせていただいていた。

最初に結論から言ってしまうと、第三者配信アドサーバは単体で使用するよりもDMPと組み合わせた方がより力を発揮する。

第三者配信アドサーバはバイサイドアドサーバとも呼ばれ、バイサイドである広告主が使うテクノロジーであり、セルサイドである媒体社のアドサーバとは区別されている。

アドサーバを広告主が持つというのは、第三者配信アドサーバは広告主にとっては最適な広告を最適なメディア・プレイスメントに最適なタイミングで配信できるということだ。究極は広告主が自分たちで仕入れてきた広告枠に対して、配信したい広告を好きなタイミングで配信できるという、広告主にとってのカスタムアドネットワークを構築できるものである。決して広告の効果測定のためのテクノロジーではない。

 

 

現状の「もったいない」第三者配信アドサーバの使われ方

 

しかし、日本における使われ方の現状は、私が理解している限りで下記の2通りがほとんどだ。

広告配信データをトラッキングして、インプレッションも含めて広告の貢献度を割り出し、広告の投下予算をリアロケーション(再配分)する
リッチメディアを配信する

 

双方ともに間違った使い方ではないのだが、第三者配信アドサーバが本来持つ、最適な広告を最適なメディア・プレイスメントに最適なタイミングで配信するという使われ方とは違う。

日本ではアトリビューションマネジメントと紐付く形で第三者配信アドサーバが広がったために、どちらかというとインプレッションも含めて広告配信のデータを第三者配信アドサーバでトラッキングして、そのデータに基づいて広告の貢献度を測り、そしてユーザーのカスタマージャーニーを描き、広告の投下予算を最適化していくという使われ方が広まった。

また、最近ではポータル系サイトのトップ面でも多く見られるようになったが、リッチメディアの配信をするために使うことが多いのが現状だ。

この2通りの使われ方でも、第三者配信アドサーバというテクノロジーはとても魅力的で多くの価値を提供できるものであるが、高い配信費に対するリターンを実感し、使い続けている広告主が日本においては少ないというのもまた現実だ。

第三者配信アドサーバが費用に相応する十分な価値を返し切れていない理由として、媒体費にプラスオンで乗る配信費や分析費、データ環境費をペイするだけの成果を実感できていないことがあげられる。そのため、まだまだ使い続ける広告主が少ないというのが現状だ。

 

 

第三者配信アドサーバが提供する 3つの真の価値

 

では、第三者配信アドサーバが提供できる価値とは何なのだろうか。

広告配信の全てのデータを取得した上でカスタマージャーニーを描き、広告投下の予算配分最適化を測る
媒体社規定以上のスペックのリッチ広告を配信することで、一回表示あたりの広告の効果を向上させる
ユーザーごとに最適なメッセージ、最適なタイミング、最適なプレイスメントで広告を配信制御することで、ユーザーに合ったコミュニケーションを実現する。(カスタムネットワーク化する)

 

上記、大きく三つの提供できる価値があるのだが、ここで第三者配信アドサーバ単体ではなく、DMPと組み合わせることでさらに大きな価値をもたらすことが可能だ。

 

 

DMPと第三者配信の組み合わせで広がる価値

 

一つ目においては、現在のマーケティングが置かれている状況を考えると、ユーザーは広告だけに接触しているわけではないので、そもそも第三者配信アドサーバが持つ広告接触のデータだけではカスタマージャーニーを描くデータとして不十分だといえる。DMP側の外部サイト行動データや、内部サイト行動データ、ソーシャルデータ等のさまざまなポイントにおける顧客データを広告以外も含めて統合的に分析し、それに基づいて広告の投下予算を配分した方が効果は高くなる。

二つ目においても、時と場合にもよるが、リッチメディアで全てのユーザーに同じメッセージを伝えれば何でもいいという訳でもなく、ユーザーセグメントごとに表現を変えた方が効果も高くなるためDMPと連携した方が望ましい。

三つ目に関しては、そもそもなぜ配信制御をするような使われ方がされてこなかったかをまず少し説明したい。まずはフリークエンシーの制御について。ここのところネット広告の世界ではリターゲティングが広がったことで、ずっと同じ広告が出続けて嫌がられるケースが増えてきた。第三者配信アドサーバは複数の媒体をまたいで全ての広告を配信制御するからこそ、真に一人のユーザーに対して適切な配信量をコントロールできるテクノロジーである。

しかし、純広告のように、事前に決められたインプレッション量だけ買い付けている場合に、一人当たりのフリークエンシーを第三者配信アドサーバ側で制御してしまった場合はどうか。純広告で買い付けたインプレッションが全て消化しきっていないと、第三者配信アドサーバ側がフリークエンシーを制御してしまうことで広告がホワイトアウトしてしまう。これでは媒体社にとって事故になるため、純広告の場合に媒体社側が配信制御機能を受け入れないケースがほとんどなのだ。実は複数の媒体をまたいで、全体で一人当たりのフリークエンシーをコントロールしようとすると、都度インプレッションを買う/買わないといったバイイング機能を持たずには出来ないという現実がある。第三者配信アドサーバはあくまでもアドを配信するためのサーバであって、バイイング機能は持っていない。

 

次に、配信制御機能として他にもシーケンス配信といった広告の配信順序をコントロールする機能や、クッキーに応じたメッセージの切り替え機能があるが、こちらについてはフリークエンシーコントロールのようにホワイトアウトするようなことがないので、媒体社側も嫌がるケースは少なく機能的には可能である。しかし、広告をどのような順序で切り替えるかというのは、DMPで持つ訪問、購入、ソーシャル上のいいね!といったユーザーの行動情報に基づいてポイントごとにメッセージを切り替えた方が効果的であることは想像するに難くない。

 

 

マーケティング活用に有用な相互連携のプレイヤー

 

このように第三者配信アドサーバは単体ではなくDMPと連携しているからこそさらに大きな価値をもたらすことができる。

ただし、現時点では国内に第三者配信とDMPが連携できているプレイヤーもそう多くない。

さらに、一言で「連携」といっても、その連携のレベルを確認した方が良い。一方通行でDMP⇒第三者配信アドサーバの連携の場合、DMPのデータに基づく広告の配信は可能だが、逆方向の第三者配信アドサーバ⇒DMPの連携がないと広告配信のデータをDMP側に蓄積できない。後者のデータ蓄積ができれば、広告配信をして、反応の善し悪しなどでユーザーセグメントをDMP側に作ることができる。広告に全く反応しない人へは広告配信を停止し、広告以外のチャネルでアプローチするなんてことも可能になり、結果的に広告のROIを高めることに繋がる。

このように第三者配信アドサーバとDMPは、「相互に」連携していることが重要だ。相互連携しているプレイヤーを選択すれば、広告主のマーケティング活動にとってより高い価値をもたらすだろう。

DMPを使って顧客の行動データというメッセージをリアルタイムに受け止め、第三者配信アドサーバを使って顧客にとって有益な情報を適切なタイミングで提供する、そしてそのデータをまた蓄積し、PDCAを回す。顧客のライフサイクルにおいて、各々のステージでどのようなブランド体験を提供したいのか。DMPと第三者配信アドサーバといったテクノロジーを組み合わせることで、実現できるはずだ。

 

 

ABOUT 酒井 克明

酒井 克明

株式会社モデューロ 取締役
SE としてキャリアをスタートし、後にネット専業広告会社でSEM ビットツールの開発や、アクセス解析ツールを活用したコンサルティングを推進。その後、ネットベンチャーにて事業開発責任者、広告主側でのマーケティング責任者を経て総合広告会社へ入社。オムニチュアとのパートナー契約をリードし、コンサルティングチームの立ち上げ、アドテクノロジーを使用したアトリビューションマネジメント、トレーディングデスクの立ち上げ、DMP を活用したマーケティングソリューション開発等、テクノロジーとマーケティングを融合したソリューションを推進。